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【奄美大島刃傷殺人事件簿】第9話 隠れ集落に潜む闇鬼灯


奄美大島刃傷殺人事件簿】第9話 隠れ集落に潜む闇

第8話はこちら

 

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

 

太鼓なのか?

 

太鼓を規則正しく打つリズムの音が聞こえる。

 

その太鼓の音が段々と大きくなってくる。

 

ざわっと女が茂る葉を払うと視界が明るくなった。開けたところに出たみたいだ。

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

 

 明らかに、太鼓の音が力強くなった。

 

鬼灯様じゃぁ!

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

 

鬼灯様がお戻りになられたぞ~

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

 

鬼灯様じゃ、鬼灯様、鬼灯様、鬼灯さまと、口々に出す声とともに、鬼灯様と言われた人の周りにわらわらと人が集まって来る。

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…打つ太鼓の音が段々と小さくなってフェードアウトするようなり、やがて止まった。

 

誰かが「ご寵愛を…」と言った。

 

その言葉をきっかけに皆が、ご寵愛を下せえ、ご寵愛を、ご寵愛をわしにも賜れませと鬼灯様の周りに十数人の男が地に座し手を上にあげ、謎の人物に手のひらを向けてご寵愛を求めている。

 

大きな帽子に大きなサングラス。マスク、長袖のカーディガンに手袋。さらに奄美大島だというのに、先ほど迄山歩きをしていたはずなのにロングスカートの人物は「しょうがない子たちね、さあお食べ」と言って、手袋を外してはぐれいぬが三日間探して見つけることが出来なかったアマミオオタニワタリの葉を一口大にちぎり差し出された手の上に乗せていた。

 

なんてことするんだこの人は、いやこの女(ひと)は。

 

貴重なアマミオオタニワタリという幻の食材をとはぐれいぬは思った。アマミオオタニワタリ葉の緑に何とも美しい手が映え、ちょうど陽の光が差し込んで、それは神々しい姿にさえ見えた。

 

一瞬、女のカゴを奪おうかとさえ思ったが、この集落にいる男どもは高齢者だが、それでも十数人を敵に回してははぐれいぬには逃げるすべがない。

 

この女が持っているアマミオオタニワタリは何よりもおれも食べたい。が、そこははぐれいぬはまだ耐えるだけの矜持を持っていた。

 

鬼灯から受け取ったアマミオオタニワタリを男どもは焦るように口に含むと、もぞもぞとガムでも噛むかのように口を動かしていた。その動かしていた口が、唇に力が失われ弛緩したかのようになると、男どもは恍惚とした表情をその眼に浮かべていた。

 

なんなのだこれは、いったい!

 

はぐれいぬは思った「アマミオオタニワタリを食せば、起きながらいい夢が見られるらしいとはこのことなのか、それほどに絶品な味なのか」と、いくらなんでもこの有様を見るまでは、そんなことは幻のアマミオオタニワタリのことゆえに吹聴的な逸話となっているのであろうと思っていたのに。

 

その光景を見てははぐれいぬはたまらず地に座し、手のひらを天に向けて「ご寵愛を」と鬼灯様に言っていた。

 

それから数か月・・・

 

はぐれいぬはハウス内農作業に就いていた。

 

自分にはいつの間にかこの集落の中に取り込まれ、なんとアマミオオタニワタリをクローン培養する温室のハウス内下僕として働かされていたのだ。

 

はぐれいぬは何度か脱走を試みた。

 

深夜、早朝、日中、いずれの脱走も失敗してしまった。

 

予約してあったフライトなどのことは遠い昔のことのことのような気もする。

 

一日の作業が終わっての、一切れのアマミオオタニワタリの葉が支給されると、何もかもどうでもよくなってしまうのだ。

 

しかし、これはおかしい。

 

これは明らかに覚醒作用だ。

 

はぐれいぬはそれからは、アマミオオタニワタリの葉片は食べたふりをして、食べることはなかった。

 

葉片を同じ下僕仲間に与え、引き換えにこの集落の情報収集をしていた。もちろん見張りがいる時は、葉片を食べたふりをし、恍惚っぽい顔を演じて見せた。

 

ある時、白衣の女がやってきた。

 

白衣の女はどうやら植物工学のエキスパートのようである。

 

情報集めのためにクローンラボ内の下僕係とその仕事を代わってもらった。こんな時にアマミオオタニワタリの葉片が役に立つ。

 

最先端と思われる植物栽培クローン施設は厳重な無菌状態にとなっている。クローン培地にカビや大豆菌などが一粒でも落ちれば、栄養満点の培地なのでクローンする植物よりもカビの方があっという間に培地を覆ってしまう。そんなことが起きないための無菌室だ。

 

はぐれいぬは三か所の消毒室を経てアマミオオタニワタリ培養のクローン室に入った。ここでの作業はクローン作業がしやすいようにと手はずを整え、研究者の手伝いをすることだ。いつもは二人ぐらいのスタッフなのだが、今日は応援も来ているのか5-6名の研究者が集まっている。

 

そのクローン室に外部からやってきた白衣の女が現れたのだ。

 

何か情報を引き出すにはこの最大のチャンスは外せない。白衣の女は度の厚そうな丸眼鏡をしていた。そして、ぶつぶつと、「STAP細胞・・・あ、ありますよぉ」と呟いていた。

 

なぜに、アマミオオタニワタリに人を恍惚とさせるような成分があるのだ。

 

はぐれいぬとて植物の中には幻覚作用を起こさせるものがあることは知っている。いわゆる植物の持つ植物が身を守るための毒物がそれだ。しかしながらアマミオオタニワタリにそんな成分はない。

 

鬼灯がなぜ、アマミオオタニワタリで下働きの下僕を自在に操ることが出来るのか、その秘密の一端を知りたいのだ。

 

その時「そうね、じゃあ植物の持つ毒性について今日は一から講義してあげるわよぉ」と白衣の女が喋った。なに、この女テレパシーでもあるのか?

 

そこの下働きのあなたも聞きなさいよぉ」と白衣の女ははぐれいぬにも声をかけた。

 

はぐれいぬは指で自分を差し頭を振ったが、「いいから、利発そうないい顔しているじゃないよぉ」と、白衣の女はおれの腕をとった。

 

相手の要求する反対行動をすることが、簡単なテクニックだけど案外逆に思っている通りになるのだ。

 

研究員の誰かによって聴講生のように椅子に座らされた。「ふっ、願ったり叶ったりだ(w」と、はぐれいぬはマスクの下でほくそ笑んだ。

 

研究員の代表と思われる者が「Dr.トマレ、それは光栄に思います。我らまだ植物工学における植物に対する知識が実際のところ低いので、ドクターのように最先端の技術によって植物の持つ様々な機能の遺伝子組み換え技術をご教授願いたいのです。さあ始めてください」と促した。

 

 

そうね、例えばマンダラゲとトリカブトの毒性を利用して花岡青洲は麻酔薬を作りましたよぉ。これが江戸時代のことですよぉ。江戸時代ですよぉ。

 

凄いですよぉね。えー、マンダラゲとは朝鮮朝顔のことでありますよぉ。

 

これの仲間のエンゼルストランペットというラッパ型の大きな花を下垂させて咲かせる草本の種子も幻覚作用がありますよぉ、その服用によって昏睡状態になって救急車で運ばれる事件も人知れずあるのだよぉ。

 

植物ではないが皆さんがよく知っている毒キノコだってそうですよぉ。幻覚物質のグレーゾーンで、幻覚きのこでマジックマッシュルームが話題になったこともありますよぉ。麻薬原料植物として規制対象ですよぉ。

 

生け垣などに植えてある夾竹桃でさえ、その枝で間に合わせの箸にして食事をしたりすると、夾竹桃の成分が体内に取り込まれるだけで昏睡状態となり、人によっては命に危機が訪れることもあるんですよぉ。

 

アサガオの花は夏の朝日に映えてきれいですよぉ。アサガオの種は漢方では下剤にもなるんのですよぉですが、実はこれは貧乏人の幻覚剤としても知る人ぞ知るなのだよぉ。

 

アサガオの種には下剤効果があるので、これでトリップするときは風呂場を利用するとからしいのだよぉ。あれは糞垂らしながらクソトリップだったわよぉ。わ、私はそんな実験はしたことはありませんよぉ。

 

我々の同胞でもあったアジア人は氷河期時代に凍り付いていたアリューシャン列島を渡ってナウマンゾウを追いかけて中南米にまで広がって移住しましたよぉ。それが現地インディオことアメリカ大陸先住民ですよぉ。

 

我らの仲間のその中南米インディオ・アパッチは、ペヨーテことロフォフォラ属で砂漠みたいなところに生えている烏羽玉というサボテンの一種を乾燥させて、乾燥ロフォフォラを食べ麻薬作用をアパッチが儀式の際に用いたりしていた事実がありますよぉ。

 

この烏羽玉にあるメスカリンは、国際的に規制され日本でも法律上の麻薬に指定されていますよぉ。烏羽玉は国内でも容易に手に入るサボテンですが、現地の烏羽玉にしかメスカリンという麻薬物質はないのですよぉ。

 

しかあし、私 Dr.トマレは現地球のロフォフォラ属から、メスカリンを生成する遺伝子の発見に成功したのですよぉ。すごいですよぉ。この遺伝子をアマミオオタニワタリ移植したのがこのDr.トマレなのですよぉ。

 

色々な植物の組み合わせを試してみたのですが、アマミオオタニワタリのみが高濃度でメスカリンを生成することが出来たのですよぉ。ここがそのメスカリン・アマミオオタニワタリのクローン工場なのですよぉ。

 

私Dr.トマレと鬼灯様はメスカリン・アマミオオタニワタリで、なんと、世界征服をも目論んでいるのですよぉ。いひっひひひっひひひひひひっ!」と、Dr.トマレは話していて、やがて自分の話に自分で興奮してきたらしく、人差し指を鼻の孔に突っ込んで鼻くそを掘り出し、その鼻くそを眉毛に付けにたついていた。

  

はぐれいぬは追い求めていたアマミオオタニワタリの幻覚作用の秘密を知ることがやっとできたのだ。はぐれいぬは深夜になって偽歯に仕込んだ通信機器で魁にこの情報を伝えていた。

 

◇◇◇◇◇◇ 

 

魁はすぐに動いた。

 

はぐれいぬの偽歯通信機器からの電波で場所も特定できた。

 

数年来からの高齢者の失踪とアマミオオタニワタリによる不思議な事件の遠因を探ってきた魁は、奄美大島にアマミオオタニワタリを培養している秘密組織の隠れ集落があるとの情報を得て潜入捜査としてはぐれいぬを送り込んだのだった。

 

魁は sayocom と共に、秘密組織の現地隠れ集落に飛んだ。

 

もちろん潜入捜査員のはぐれいぬの救出のためだ。

 

「やったな」魁。

 

「はい。魁さん、 sayocom さん。お二人でのお迎えありがとうございます」

 

「なに、言ってんのかしら。お仕事よ、仲間だし」と sayocom がウィンクする。

 

「じゃあ、太郎とはぐれいぬはこのまま離脱して。危険なことはあたしたちに任せて。この後、特殊部隊がここでのことは何もなかったことにするわ」

 

「太郎、魁。ここの記事を書くときはそれとなくぼかしつつよろしくね」と、またしてもウィンクし唇をチュッとするように二人に向けて尖らせた。

 

魁もはぐれいぬも、後は sayocom がここをきれいに、本当に何もなかったの如くに一掃してくれることだろうと分かっていた。

 

◇◇◇◇◇◇ 

 

秋田県仙北市角館町。角館温泉花葉館にてきりたんぽ鍋を食べた三人は、満足げにそれぞれのスタイルでくつろいでいた。

 

「しかしあの鬼灯様とは何者だったんだろうなあ。アマミオオタニワタリの葉をちぎる手が、とてもきれいだった。声は低く良く通る感じだったので、歌もうまいんじゃないかなあ」と、はぐれいぬは呟くように言う。

 

引き継いで sayocom が、「大きな帽子に大きなサングラスでマスクでしょう。それに長袖のカーディガンに手袋して、奄美大島でロングスカートだった人物はどうしても特定できないのよ」と言った。

 

魁が「Dr.トマレなる人物と思しき者もいなくはない。同じ医者だが、彼女歯医者なのだ。それにどちらかというと物静かで人前でしゃしゃり出て講義講釈を垂れたりする人物ではない。この辺はまだ調査を続ける。なんにしてもだが、あの事件をものにしたおかげで、俺は世間の注目を集めることが出来た。今やちょっとしたインフルエンサーだ」

 

「魁先輩は、インフルエンサーじゃなくて、風邪の菌を撒き散らかすインフルエンザーの方じゃないんですか」なんて、はぐれいぬが茶化す。

 

 sayocom が笑いながら「それにしても、あの秘密基地の人たちは高齢者ばかりだったわ。どうやら鬼灯様とやらをナンパしたつもりが逆に誘拐され、秘密基地で下僕にされたみたいなのね。あのおじいちゃんたちの秘密基地での記憶は全て消してから解放したの、だから安心して。でも、男は幾つになっても懲りないわね」と、さらに「お二人も、鼻の下を長くして私のビキニ姿を見てるんじゃないのよ。あたし、これからひと風呂浴びてくるんだから」と、帰国子女らしく温泉にビキニで入るつもりだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

奄美大島名瀬市のアーケード街の中を、電動チャリに古い子供用補助席を付けた女が颯爽と通り過ぎる。それを見た爺と言うにはやや早いしかし高齢者には間違い男どもが、過ぎ去る電動チャリの後を追うよう見つめている

 

アマミオオタニワタリの緩いフラッシュバック的な深層心理反応の残像なのだろうかのか。

 

その中にひとり、金髪の男がふらふらと、走り去り行く電動チャリの方向に手のひらを差し出し・・・

 

ご寵愛を…

 

◇◇◇◇◇◇

 

奄美大島刃傷殺人事件簿】を最初から読むはこちらです。

 

第!?話 It's your turn.

 


登場人物

もへじ、ツベルクリン、ニシガキ(ナオキ・ニシガキ)、トマレ(Dr. トマレ)、オイチ、アメリッシュ、アメリッシュの姑オババ、アメリッシュの叔母、その娘優ちゃん、優ちゃんの彼氏太郎君、はぐれいぬ、え子(ecoplace)、ポジポジ子、その彼氏ストライク、魁太朗(sakigake news)、sayocom、ほおずきれいこ、武文(ふみけた)、まままっこり、鰻、殿、料亭の女将、二人の刑事


登場人物、召喚。id:tuberculin id:mamamaccori id:naoki-nishigaki id:kitano-stop id:oichiro id:haguremado890 id:ecoplace id:pojikatu id:sayocom id:funyada id:i-shizukichi id:mifuketa  呪文みたいだね。 


 

登場人物様でIDが抜けていましたら、ご自分で続きを書いてご自分で追加してください (´▽`;;;)

 

※当方の奄美大島の画像などは、続きを書かれる方はご遠慮なく使っていただいて構いません。物語がなくても観光シーンの描写だけでもいいと思います。 

 

 ※記載IDに一部ミスがありましたので修正の必要があります方はよろしくお願いします。誤 sayokom →正 sayocom となります。もしsayokom 

IDをご使用の方がいらしたとしたら、誤記記載によるご召喚ご迷惑お詫びいたします。 2019年7月20日

    


追記:誤字脱字不整合性は随時修正中。

 

第8話がかなり奇想天外な流れになっていたので、この面白い流れを膨らませて、かつこの話をなかったことのようにして次の方が何か書きやすいような…分からないけどそんな風にしてみました。

  

さあ、次はあなたの番です。誰が参加しても構わないのでよろしくお願いします。

 


せっかくなので、なにがせっかくなのかは別として、ここはこうした言葉にするとか、こういった表現にするとかのアドバイスがありましたらよろしくお願いします。