チコちゃんに叱られないブログ

人生は雑多なのです😋

1ページ版・奄美大島刃傷殺人事件簿


奄美大島刃傷殺人事件簿

2020年2月25日 

 

同タイトル記事を1ページにまとめてみました。【奄美大島刃傷殺人事件簿】 複数人のブローが様の寄稿協力を得た試みとなりました。目次部分でブロガー様の敬称は省略させていただいています。あしからずご了承願います。それぞれのブログに訪問してご覧になりたい方は「ブログ連携妄想小説・奄美大島刃傷殺人事件簿」週よりどうぞ。

 

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 第一話 もへじ 2019年6月17日

プロローグ

「とぅじ、うらぁブログやってんかあ、どれ見せてみ」

「おと、これは見せられねえの、おらの楽しみだあ、はじかさぁ…」

深夜零時に近い。

 

妻は夜の仕事から帰って来ると服を脱いでジャージに着替え、パソコンの前に1-2時間ほど座っていた後に就寝。まだ寝ている。シフトが遅番なためとアルバイトで疲れ切ってひたすら寝ている。

 

時々、寝返りを打ってはけつをぽりぽり掻いている。

 

男は今は仕事はしていない。

 

今、家(うち)の生活は妻の働きにかかっている。

 

仕事をしていない男の朝は早い。

 

娘に食事を作って送り出し、家事一切を妻の代わりに受け持っている。これが今は仕事もしていない少し心を病んだ男のできる精いっぱいの妻への愛の表現であった。

 

娘は妻の連れ子であったが小さい時から共に暮らし、今では自分の娘と何一つ変わずの娘の父親であると思っている。

 

男の朝は早いが、朝が過ぎればすることは少ない。

 

掃除に洗濯がすんだ午後、男はふらりと釣りに出かける。

 

車で20分も走れば港に出る。

 

広い港だが人は少ない。

 

突堤で釣り糸を垂れ男は浮きを見るともなしに空(くう)を見つめた。

 

 

見つめた空の先には何もないが、そこにぼんやりとパソコンの前に座る妻のまりこの姿が浮かぶ・・・

 

男は内縁とはいえ、近頃の妻のパソコンでの行動に得心がいかない。

 

仕事で疲れているだろうにすぐに寝ようともしないで、モニターを見つめてにやにやと嬉しそうだったりしている。

 

そういえばネットで出会いとか、現実の恋愛よりも惹かれ合って、その結果で三角関係だの、別れる切れるって問題も耳にしたことがある。

 

浮きがくいっと沈み、男は無意識の反動で釣り竿を引いた。

 

が、喰いが浅く、魚は釣り針を逃れた。

 

釣り針から逃れた魚が岩礁に向かって逃げ行くのを見て、男は思った。

 

妻のパソコンを調べてみようと・・・

 

 

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登場人物
  • アメリッシュ・・・叔母と優ちゃんと太郎との関係を取り持つことをオババの命により実働部隊とさせらされている。実は隠れた名探偵で裏社会では知る人ぞ知る超有名人であり、別名は「難度ディズニーシーのジーニー」と呼ばれている。このことに関してはオババも、アメリッシュの裏社会のことは何も知らない。


  • もへじ・・・ただのお調子者。なにをとち狂ったか茶髪グラサンで、おれってイケけているだろってな風を装った高齢者。


  • 謎の男・・・もへじ殺害容疑者・・・


  • ツベルクリン・・・社会性を間違ったひょうきんな添乗員で、奄美大島にツアー観光を引率。売店でただで貰えるソフトクリーム券を行使するときに無上の喜びを覚えている。ともえ投げが得意なので機会あらばもへじをともえ投げにするチャンスを窺っている節もあるが、それよりも大問題は、ブログ流言飛語によるツアー会社の損害である。


  • オババ・・・アイリッシュの知恵袋で影の支配者。今回の事件の影の黒幕とでもいうかなんの関係もなく、ただ何事にも口を挟みたくてアイリッシュを顎でこき使う。知恵者策士で自他ともに認める個性豊かなディズニーオタクである。


  • まままっこり・・・一人娘の母であり少し心を病んだ内縁の無職の夫の妻。けつがでかいことでコンプレックスを持つが、今ではそのけつのでかさを居直ってまり*1出しまままっこりとしてブログ界下仁田ネギ街道をまっしぐらで今回の事件のキーパーソンとなる女。実情は家族愛に溢れた心優しき母であり妻である。


  • ナオキ・ニシガキ・・・和歌山県人でお忍びでツアーに参加。梅雨も明けきらぬ奄美大島に、暑い、暑い夏の雰囲気をまとい一人きらきら光りまくっていた。少なからず追っかけ報道陣も数名ツアーに参加しているようである。それでなくても南国の空が、ナオキ・ニシガキの登場で異様な暑さに包まれてしまったことからこの事件は起こるべくして起きたのだ。


  • Dt.トマレ・・・絵日記ブログ作家兼歯科医。おっとりタイプで奄美大島にツアー観光に来ているのかがなぜかよく分からないみたいみたいで、バスの車窓から流れゆく風景をぼおっと見ている。時々鼻の孔に指を突っ込んで、指先をヌメラっとさせてにやついている。その指を眉毛に塗り付け、なにか分かった風ににやつきながら片眉を上げて独り言ち*2ていた。ほんの少しだけぽっちゃりした姿とは裏腹に、胸は…以下詳細自粛中。


  • べ子・・・赤丸家の行方不明になったべ子がなぜか奄美大島に・・・もへじは奄美大島でべ子を見かけたという2チャンネルの情報もあって、このツアーに参加した模様であるとかないとかわけわかめなようである。♪海を見つめていた 島の居酒屋むちゃかなにいた ブログ消したべ子 ブログ逃げの べ子 べ子 何処にいるのか…*3


  • ほおずきれいこ・・・奄美大島で見かけた手のきれいな美人さん。電動アシストチャリで颯爽と名瀬の繁華街を走りゆく。なぜかいまだに補助席をつけたままの電動アシストチャリに乗ったその美しき姿に故に、高齢男性からナンパされることが引きも切らない。本人は献血に骨髄提供など奉仕精神旺盛であり、凛とした雰囲気がその美しさをより高めている。誰も知らない公然の秘密が、既に二十歳の男の子供がいることである。


  • オイチ・・・ラーメン大好きで園芸も好きという心優しき知略家。ツアーに参加した目的は、『ひさ倉』で「鶏飯」を食べることが目的の一つであるようであるのではないかと思われる節があるのであるかもしれないのである。


  • 優ちゃん・・・母と太郎と親睦ツアー観光で奄美大島観光。なぜかオババにアイリッシュも付き添いで同行。天然で苦労知らずの純粋培養されたかのような清らかな少女やや婚期を逃し気味な女性。


  • 叔母・・・優ちゃんの母親で、時々ヒステリーを起こす。娘を溺愛し自分の手元に止め起きたいカゴの鳥娘症候群を患う。故に、娘と太郎の破綻を本能的に望んでいる。


  • 太郎ちゃん・・・優ちゃんにべた惚れの朴訥な若き農業者。自分のことをよく知って、分をわきまえた好男子ながら、親から受け継いだ農業を継承するしっかりした農業経営者でもある。優ちゃんよりもわずかに歳下である。


  • はぐれいぬ・・・奄美大島に山菜で食べるタニワタリを採りに来ていた。事件当日のアリバイはない。マニアックなコミックオタクでもある面が露呈中。


  • ecoplace・・・奄美大島のスーパーでレジ係をやっている。自分のレジを通った人の様子はほぼ100%掌握している。謎の男のカゴの中身に不信感を覚えていた。なぜか人の目から隠れるようにひっそり生きているが、その真意は定かではない。


  • ポジポジ子・・・ストライクさんと奄美大島ツアーに来てしまったみたいで、ストライクさんにぞっこんである。とても可愛い女で、どうかより良い幸を掴んで欲しいものである。


  • ストライク・・・男としては女の体だけ狙いで婚活サイトを利用している。一見受けが良いために新しい女ができやすいが、体だけが目的と分かるといずれの女も去って行ってしまう。今回はツアー旅行にまでポジポジ子と来てるので本気の可能性が高い。


  • sakigake news・・・奄美大島刃傷殺人事件簿に関心を持ち調べる東北出身の記者。足で地道に動き一つ一つ資料を積み上げていくタイプの古い記者魂を持っている。記事一本でメジャーライターとなってウハウハ人生をと頑張っている。


  • sayocom・・・外資系IT企業OLは出張で名瀬に訪れていた。後に、この事件の重要参考人となるかどうかは不明。頑丈さが売り物でハードアクションにも強く実は某国CIAの諜報員。CIAってだけで某国じゃないだろうって突っ込みはなしで、パンティをパンツって呼ぶ男っとこ前さも持つ。

 

 

    

 

奄美空港 

 

 「いやあ、やってきました奄美大島。一度来たかったんだよねぇ。梅雨も明けたみたいで、天気も良くてラッキーって感じだわ」

 

男は奄美空港到着口に着くなり陽気な気分でそうつぶやいた。つぶやいたと思っているが本人の声は大きく、同行のツアー客はこの人はなんなのって冷たい顔でチラ見していた。

 

 「はいはい、もへじさん、着いたばかりで、そんなに興奮しないでください。これから観光バスですからね、その前におトイレに行って出すものをさっさと出して来なさい!」

 

ツアー観光で何度かもへじを添乗したことのあるツベルクリンは、そう言ってもへじに注射をする。ツベルクリンの注射とは注意をするという意味程度のことのようである。

 

 「へへ、だって、うれしんだもの」ともへじが返すと

 

「じゃ、そこの売店でソフトクリームでも買って食べなさい。あ、ついでに私にも一個ね。当然、貢物としておごりでね。」

つづく*4

 

余禄: 

なんだか登場人物の紹介だけで全エネルギーを使い果たしてしまってこの物語は進展があるのかどうかその動向に全く予断を許さないどころか多分これで終わりじゃないかと思われる節も高くてなにがなんだかさっぱり分からないけどあんたいったい何がしたいのって聞いてみても本人がそれを分かっていないみたいだから何とも言えないけどやはりここはブログ愛ということで紹介した皆様のブログが面白いからってことのようなのではないかなって勝手に想像するもそれは自由だけどここから話を展開できる人がいたら後はバトンタッチするからよろしく頼もうってどこの玄関を頼もうと開けて入り込もうとしているんですかって問題ですけどあんたそんなことをしていたらおまわりさんに捕まっちまいますよってひょっとしてあなた 怠惰 ですねえ。 

 

 

第二話 アメリッシュ (id:funyada) 2019年6月19日

にわか推理作家は何人に?

余禄1: 

ブログ小説『奄美大島刀傷殺人事件簿 』連作 

このブログは、もへじ氏が、アメリッシュほか数名の「はてなブログ民」を登場人物として書いた推理小説の続編です。 

あろうことか、もへじ氏、

私を隠れ名探偵と、そんな嬉しいタイトルで推理小説にしました。 

《隠れた名探偵、知るひとぞ知る超有名人。

別名「難度ディズニーシーのジーニー」》

って、かなり首を傾げる命名だが、

深くは問うまい! 

その名、もらった! 

ぜったい返せへんから! 

ミステリー映画も小説も大好きなアメリッシュ 、やはり、もへじ氏の挑戦に、のってみるしかない。

 プロローグの内容は下記ブログ参照ってことで 

プロローグ

奄美大島刃傷殺人事件簿(フェイクで、おま!) - へのへのもへじ・改

 ま、かいつまんで説明すると、

『妻に収入を任せた仕事のない男が、朝釣りに。

そこで釣り損ねた何かが岩礁に浮かぶのを見た』

で終わっています。 

では、続き!

いきまっせ 

だだだだーーーん! 

 

それは、ズブズブと足をツッコんでいくような感覚であり、

両足から、胴体、首、頭の先まで沈んでいくほどの底なし沼である。

 

深すぎる。

 

息が苦しい。

 

も、もう息が・・・・・・・

 

あ! ま、まずい!

 

冒頭で主人公、殺しちまった!

 

モヘジ氏が作ったキャラ、6行で殺してはまずい

寂寥は頭だけを残して、まだ沈んでいない。

 

そんな寂寥感で頭だけ残った男が、釣りをしていた。

 

釣り棹に何かが引っかかり、無意識のうちに男は釣り棹を引いた。

喰いが浅く、その何かは釣り糸を逃れていく。

 

糸が切れていた。

もう釣りは終わりだ。

妻のパソコンを調べようと思った。

 

が、しかし、どうも引っかかる。

 

あれは何だったのだろうか?

 

大型魚でも、簡単には切れない高級品の糸を使っている。

仕事のない彼の唯一のこだわりといっても良かった。

 

「いやだな」

思わず声が漏れた。

 

男は子どものころから、自分の運命を呪っていた。

なにをやってもうまくいかない。

親の期待を受けながら、そのすべてを裏切ってきた。

 

挙げ句の果てのリストラである。

 

これまでの人生で、なにか誇れることがあったのだろうか。

 

心の奥の深いところに 一つの記憶が残っている

 

小学生のころのことだ。

いじめに会った同級生を、助けた、わけでもない。

ただ、いじめなかった。

それだけだが、そのいじめられていた同級生から、卒業式でボタンをもらった。

 

「なぜ?」と聞くと

「忘れたんか。お前、俺に声かけてくれただろ。嬉しかったんだよ」

 

そうだったのか?

覚えていない。

たしか、モヘジとかいう名前だったような・・・

 

男は、その日からモヘジに負い目を持った。

 

釣り糸を切った謎の物体

あの時のようにうやむやにしてはいけない。

男の心に疼くものが、次の行動へと彼を駆り立てた。

 

海岸線に沿って歩いていく。

 

岩礁がごつごつして歩きにくい。

海風は強く、いつもより波が荒い。

 

と、

視線の先、ちょうど波消しブロックのくびれた場所に、なにか黒いものが見える。

 

「まさかな」

 

男は嫌な予感を振り切るように、そこへ向かった。

打ち消しても嫌な予感は消えない。

自分の妄想を笑い、昼のサスペンス劇場を見過ぎたんだと苦笑した。

 

近づくにつれ、男の釣り糸を切って流れていった黒いものが、徐々に鮮明に見えてきた。

 

次に見えたのは、波に揺れる金色の糸のようなもの。

なんだろうか?

束になって、波が来るたびに揺れている。

 

「ひ!」

 

男の口から悲鳴ともいえない声が漏れた。

 

声がでない。

叫びたいが、声がでない。

 

男は助けを求めようと背後を振り返った。

 

そのとき、ちょうど、朝の釣りツアーに参加した人々が港に集まっていた。

ツアーを先導するのは、ツベルクリン

 

奄美大島ツアーを急に観光会社社長から丸投げされ、不機嫌ではあったが、そこは顔に表さず、なんとかわがままなツアー客を先導していた。

 

ツアー客にはナオキ・ニシガキ

歯医者の仕事から逃げてきたDt.トマレも参加していた。

 

男は彼らに両手をあげて合図しながらジャンプした。

 

その影で男装の麗人、CIAから派遣されたsayocomが、東北出身でなぜか奄美に詳しいsakigake newsに事情を聞きながら、立っていた

  

 余禄2:

 🔴     🔴     🔴 

では、続きはどなたかにバトンいたします。 

不定期『奄美大島刀傷殺人事件簿』

お楽しみに 

登場人物(もへじ氏のブログより) 

追伸:刀という字ですが、刃という字が変換しにくいのです。刀傷に変更しちゃいました。ごめんなさい。

   🔴    🔴    🔴 

 

第三話 ほおずきれいこ (id:hoozukireiko)  2019年7月11日 

余禄:

ついに完結か!?

奄美大島刃傷殺人事件簿

(あまみおおしまにんじょうさつじんじけんぼ)

 

今までのお話

美大島ツアーに参加したもへじ。ツアーを率いるのはツベルクリンという名の添乗員。ツアー参加者は、ニシガキ、トマレ、オイチ、サキガケ、アメリッシュ、そしてアメリッシュの姑オババ、叔母、叔母の娘の優ちゃん、優ちゃんの彼氏、ポジポジ子と彼氏。

朝の海岸。お散歩ツアー中、行方不明になったもへじ氏。もへじ氏が集合時間になっても現れないので、探していたところ、釣りをしている男に呼ばれたので、かけつける。そこで見たものとは……

 

 

満を持して自称小説家、ほおずきれいこが続きを執筆。

登場人物 もへじ、ツベルクリン、ニシガキ(ナオキ・ニシガキ)、トマレ(Dr. トマレ)、オイチ、アメリッシュ、アメリッシュの姑オババ、アメリッシュの叔母、その娘優ちゃん、優ちゃんの彼氏太郎君、はぐれいぬ、え子(ecoplace)、ポジポジ子、その彼氏ストライク、サキガケ(sakigake news)、sayocom、ほおずきれいこ

登場人物の詳細は第1回目をごらんください。

 

 ほおずきれいこ的奄美大島刃傷殺人事件簿はじまりはじまり~

 

波間に浮かぶ金色の糸状の塊を発見する添乗員ツベルクリンとその一行。

あっ、あの髪の色は、もへじさん!

誰もがそう思った。そして、皆が顔を背けた。

見たくない。怖いのだ。

「こわぁい♥ストライクさん♥」ポジポジ子はストライクに抱きついた。
ストライクもポジポジ子の肩を抱いた。ふたりは昨日の甘い夜を思い出した。

 それを見て、恋人太郎くんによりそう優ちゃん。睨みつけるアメリッシュの叔母。

 

ツベルクリンは思った。

警察を呼ぶのか……もしあれが、波間に揺らぐ金髪の物体が、もへじ氏だったとして、予定通り明後日の便で東京に帰れるのか。いや、無理だろうな……。

 

できれば、見なかったことにしたい。見なかったことに――。

 

しかし、ただひとり観察をつづける者がいた。サキガケだ。そしてきっぱり言った。

「あれはもへじさんじゃありません。もへじさんのかつらです。」

それを聞いて皆がまた視線を金色のゆらめくものに戻した。

確かにそれはかつらだった。

なーんだ! ってか、かつらだったのかよ!

皆は胸をなでおろした。安心して笑いもおきた。

しかし、サキガケの傍にいた sayocomがサキガケになにかをささやいた。

sayocomはこのツアーとは別口で奄美に来ているが、何かを探るため、サキガケと行動をともにしているCIAの諜報員だ。

「もへじ氏は海に転落したかもしれない。警察を呼びましょう」サキガケは言った。

「絶対にダメ!!」

くい気味にそう叫んだのは、アメリッシュの叔母だ。

「警察をよんだらツアーほどうなるの? ツアー続けられないじゃない」オババも叔母の援護する。オババは叔母の姉である。

「高い金出して来ているのに、警察の事情聴取で半日つぶれるなんて、ごめんだわ。もへじさんなら帰りの飛行機までに見つかればいいじゃない。ツアーを続けましょう」

そう言って、オババはアメリッシュをちらっと見る。早く、あんたもなんか言いなさいよ、といわんとばかりに。

アメリッシュは、遠慮がちにつぶやいた。「もへじさんは海に転落するようなアホじゃありません。きっとお散歩中、かつらが風にとんで海に落ちてしまったので、帽子を買いに行ったのだと思います。」

よくやった、アメリッシュという顔でニヤリとするオババ。

「もへじさんはツアーのスケジュールを暗記しています。出発前には必ずブログに行程表を書いているのです。このあと、予定通り行動すれば、どこかで合流できるはずです。ほら、みてください。もへじさんのブログを。あっ! 更新されている! もへじさんは生きています!」熱い男ニシガキが言った。

「予約投稿じゃないの?」トマレが冷静に言う。

「違いますね。公開時間をみてください。予約投稿なら、時間は毎時0分と30分にしか設定できません。15分前に公開しているところを見ると、海に落ちたとは考えられませんね」オイチが言った。オイチは早くラーメンが食べたいので、旅程が押して昼食時の自由時間が少なくなることを心配していた。

 

 

第四話 もへじ 2019年7月11日

 「おと、ちゃんと鯵さ釣ってこ、もへじに鯵寿司食わせるんだろ?」とまりこが言う。

 

 「ああ、分かってる」籍こそ入っていないがまりこの夫は不機嫌そうにぽつりと、まりこの方を見もせずに言葉を吐いた。

 

    

 

 まりこのやつ、ある日、古いパソコンを引き出してきてネットを始めたかと思えば、何やらブログってものを始めたみたいだ。

 

 おれが店を止めて仕事していないので、あいつの稼ぎで暇つぶしをしている現状で、んとに済まないと思っていた。

 

 これじゃいけない。思い何とかしようと思うが、何せこんな小さな島だ。若いもんは仕事を求めて内地に行っちゃう。俺のような中年にはこの島じゃ仕事らしいものは見つけるのも難しい。

 

 名瀬のアーケード街でさえ開いていない店が増えているこのご時世だ。男は料理人だった。男はやっていた飲み屋風の飲食店がにっちもっちも行かなくなって、廃業を決めたころには心も病んで荒れていた。

 

 酒を飲んではあいつと口論になり荒れ狂っていた。そこへ割り込んでくるあいつの娘。子供なりにおれから親を守ろうと必死になって入ってくる。

 

 あいつの子だけど、今じゃ自分本当の娘みたいに可愛いさ、そうさ。

 

 でも、頭に血が上っているときはそんなことも何も考えられない。

 

 「死にたいわけじゃないけど、『死にたい』とまで思ったさ」

 

 手あたり次第に側にあるものをぶん投げてったって、おれだって人の子だ、酔ってたってあいつらにあたらないように投げているさ。

 

 まりことも「どうすんの?」って、何度も諍って家で泣き叫びあばれもした。

 

 「家を出て行く」

 

 「別れよう」

 

 「別れない」

 

 「何とかなるよ」で、大の男が、自分の気持ちを抑えきれず声を出して泣いていしまった。

 

 あいつもこれまでかなって顔をして、おれを見ていた。

 

 今のこんな俺じゃあ、あいつの娘の父親になってやる資格さえありゃしない。こいつらの負担でしかない。

 

 「出て行く!」

 

 その時、あいつの娘が、泣きながらおれの足元にしがみついてきた。

 

 『お願い、どこにも行かないで、いてくれるだけでいいから。それだけでいいから、お父さんっていくらでも呼ぶから、一緒にいて、一緒にいて…』*1

 

 男は、なおのこと大声を上げて泣きじゃくった。娘と義理の父が、本当の親子になった喜びの涙も入り混じっていた。

 

 「私は、この人が本当に好きだ!」普段、めったに泣くことのない気丈なまりこの目から、大粒の涙が溢れて零れ落ちる。

 

    

 

 翌日… 

 

 「ごめん下さ~い、もへじですぅ」

 

 「ここ、でかまりのまりこさんのお宅ですよね?」

 

 家の中から訝しげに男が出てきて言った「あんたは?」

 

 「東京から来たもへじです」

 

 「来たといっても観光ツアーできました。朝の集合時間がゆっくりなので早起きし、散歩がてらで、前にまりこさんとお約束していたので来ちゃいましたぁ」

 

 「ああ、それがあんたか」

 

 「ネットの・・・ブログ…で、知り合ったって?」

 

 「そうなんですよ、あなた様がご主人さんですね。流木集めがご趣味だそうですね。そうそう見ましたよ、流木で作ったクリスマスツリー。なんて洒落たことするじゃありませんかあ」

 

 「へっ、そうかい」口はぶっきらぼう気味だが、音の中にまんざらでもない響きが含まれていた。

 

 男は部屋に案内して「まあ、座んなよ」と言った。

 

 「はい、それじゃあ失礼して」

 

 もへじは持っていた紙袋から何やら取り出して、「これ、東京土産の『東京ばな奈』」です。つまらないものですけど美味しいので食べてみてください」って、押しつけがましい物言いで男の方へ差し出す。

 

 「いや、そんな、そうかい…」

 

 「おーい、まりこっ、東京のもへじさんだよ、お土産持ってきてくれたよ。早くこっちへ来いよ」

 

 「おと、今行くってばあ」

 

 前掛けで手をふきふきしながらまりこと思しき女性がやって来る。

 

 歳のころなら四十代前半、ややぽっちゃり的に見えるのはお尻の大きさ故か。クリっとした可愛い目に眼鏡をかけ、黒い髪は後ろで束ねてある。

 

 まりと呼ばれた女は用意してあったお茶道具でお茶を入れもへじに差し出しながら「あら、どうもぉ、はるばる来てもらってうれしいです、おど、この人がもへじさんだよ。ネットでバカやっている人」 なんてにこにこしながら男の横にくっ着くようにぺたんと座る。

 

 「これ、もへじさんが…」

 

 「はげー、うれしい。『東京ばな奈』だわ、そんなバナナって、つまんないダジャレでどうもです」と、おふざけ気味で喜びお尻を左右にゆする。

 

 「じゃあ、おと、もへじさんに何かごちそうするんじゃないの?」

 

 「おう、そうだったな、支度してくらあ。ちょっと失礼しますよ」と言って、男は厨房と思しきまりこが来た方向へと行く。

 

 もへじが、男が行くのを見るともなしに後を追うと、右手の床の間風な場所にひと振りの刀が立てかけてあるのが見えた。*2

 

 「いやあ、もへじさんて、その年で金髪にしているんですね、はげーえ驚きです。帽子とって見せてくださいよ」

 

 「いや、この帽子は脱げないんです」と焦り気味にもへじが言った。

 

 「いいから、いいから」そう言ってまりこは立ってもへじの側に行き、もへじの帽子を取り上げてしまった。

 

 「ぴかぁーっ」と光を放つ頭部。

 

 「はんっげーえええっ。もへじさん、これじゃもへじじゃなくてえ『ハゲげじ』さんじゃねぇ、はげー!」と、笑いながらまりこが喜ぶ。

 

 「いや、その・・・」もへじがあたふたして説明を始めた。

 

 「ホテルを出て朝の散歩で、川があったんですよ。小魚が群れていたんで覗き込んで見ていたんです」

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 「そしたら、突風でカツラを持って行かれちゃったんですよ。金髪で特注だから高かかったんですよ、あれ」

 

 確かにこのツアー旅行は熱帯低気圧が近づいている時ではあった。

 

 「で、帽子だったんですね」

 

 「その、エド・ハーディの帽子に合っていますよ」おほほほほと苦笑いしながら、取り上げた帽子をぐいぐいともへじの頭に被せるまりこ。

 

 もへじは帽子を被り直す。

 

 「おい、出来たぜ」

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 「わあこれは美味しそう。ぼく、寿司で光物が大好きなんですよ。これは鯵寿司ですか?」

 

 「この鯵、もへじさんに食べさせてやろうって、昨日、うちの人が30分ほどのところの堤防へ行って釣ってきたんですよ」と、まりこが夫に信頼と愛情を寄せた目で見つめて言う。

 

 「ご主人さん凄いですね、お寿司が作れるんですか、どうやって作るんですか?」

 

 「それはな、長くなるけど朝の集合時間に間に合うように話すから聞きなよ。あとで、車で、ホテルニュー奄美まで送るからさ」とまりこの夫が言う。

 

 「うちのひと、元料理人で居酒屋みたいなことをやってたんですよ。女の人に良くモテてねえ。私ぃ、焼きもち焼いていたからお店止めてくれてよかったって思っているんですよ」まりこがそう受け継ぐ。

 

 「まずな、鯵を三枚におろすんだよ」

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 「釣りに行ったけど坊主だったんでな、ほれそこのアーケード街のグリーンストアーで買ってきたんだよ。周りは海だ、魚はどこでも新鮮だ!」

 

 「おと、坊主だったの?」まりこがそこにがっつりと食い込む。

 

 「釣りはそんこともあるさ、この前だっておめえ真っ暗な晩の釣りでトイレでうんこしていて変な男に出合ったとか言ってたじゃないか」

 

 「それに、生姜も必要だったからな」

 

 「で、塩を振るんだ。この塩はネットでえ子(ecoplace)さんがプロデュースにかかわったんじゃないのかというのをまりこが見てさ、それでさ買ってみたヒマラヤピンク岩塩ってやつなんだよ。この塩が美味しのさ。ミルになっているから、くりくりしてたっぷり振りかけるんだ」

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 「強めの塩で2-3時間置いたら鯵から水が出るから、それを目安にして塩ふりした鯵を流水で洗うんだ。そしてな、生酢に漬け込むんだ。器はスーパーの発泡皿なんか使うと手軽だよ」

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 「こんな風になっ」

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 「で、ちょっと酢から出ている飛び出ている面があるので、キッチンペーパーで被せておけば酢から飛び出ている部分にも毛細管現象で酢が回るってわけさ」

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 「おと、あんたぁ、顔が良いだけじゃなくて、頭もいいね。そんなところに惚れちゃってるんだよ」ってまりこがのろけている。

 

 「誰も聴いてねえよ、そんなこと」と、もへじが心の中でつぶやく。

 

 「で、1-2時間でほどで漬かるから酢から取り出し、指で皮を剥いてからタッパーか何かで保存しておけば数日は食えるってわけだ」

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 「皮を剥くときはな、頭側から尻尾側に、ほらこの通りだ」

 

 「ほおお、これはたまりませんです。美味しそう!」ともへじがよだれを落とさんばかりに言った。

 

 「握りずし用切り身にする」とやや嬉しそうにまりこの夫が言う、

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「合わせ酢を作るんだけどさ、あいにく砂糖を切らしちゃったんで氷砂糖をペンチで砕いてこんな風にした」

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 「酢を入れる」

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 「塩はこれぐらいかな。江戸前の寿司は少しだけ塩が感じられなきゃいけないよ。だから少し多めだ」とまりこの夫が言うと「おと、東京にいたことがあるの?」って食い気味に言った。「昔のことだ」と、まりこの夫はぶっきらぼうに言う。

 

 まりこの夫に、東京で料亭にいたときの嫌な記憶が甦る…

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「ご飯は少しのすし飯ならチンするご飯でも大丈夫なんだよ」

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 「チンしたご飯に合わせ酢をかけて、ささっと切るように混ぜ合わせ、小型の扇風機の前で熱さましと余分な水分をとばしておくのが大事だ」

 

 「はげー、おと、あんたぁって何でも出来るから助かるよ、ありがとう♪」って、まりこがのろけ気味に言う。

 

 「よせやい、お前が働いているんだ、それだけでありがたくて家事炊事洗濯ぐらいいくらでもやってやるさ」と、まりこの夫がぶっきらぼうに答えるが、言葉の中には愛情らしき雰囲気がちゃんと混じっている。

 

 「シャリが冷えたし、さあ握ろうかね。ちなみにボールの水は手水と言って少し塩を入れてあって、握るときに使う水だ。

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 「ちょい、ちょい・・・」

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「これは薬味のネギと、千切り若生姜だ」

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 「食べるときはな、最初に千切り生姜を鯵の上に乗せるんだよ」

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 「それからお醤油に付けたネギを乗せて食べるとうまいよ。ああ、うめえ」と男がごちる。「って、おと、それ、自分が食べるのじゃないしょう」とまりこが肩で男を押す。

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 「いけねえ、いけんねえ」男は頭をかきかきもへじに向かって頭をぺこりと少し下げた。「たくさん作ったから、いくらでもあるから安心してくださいもへじさん」

 

 「いえね、今度は、七味を振って食べても美味しいんですよ。う~ん、うまい!」

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 「って、おとたったら、本当に何やってんのお、もへじさんが呆れているわよ」とまりこ。「いやもう、見なよ、この鯵の半生な酢〆め状態を、ついたまらなくてさ」

 

 「今度は、ワサビと千切り生姜、ってええ、これもうまいやあ!」

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 「いかん、止まらなくなってきた・・・まりこぉ、お前も食ってみろほれ」と言ってまりこの口にも鯵寿司を放り込む。「本当に、美味しいよう、おとぅ」

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 「あは、あはあはあはははは・・・」もへじは、ここに至っては苦笑いするしかなかった。

 

 夫婦仲が良いのは羨ましい限りだ。俺の女房なんざ、おれを捨てて出て行ってもう三年目だ。

 

 結局もへじが食べたのは、箸休めに出たヒマラヤピンク岩塩で味付けした納豆だけだった。もへじは東京から、わざわざまままっこり家ののろけを聞きに来たようなものだった。

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 まあ、塩納豆もそれなりに美味しかったようだが、食いを逃した鯵寿司に心が残るもへじであった。

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 もへじが時計を見ると朝の集合時間が近づきつつある。「ぼく、今日のツアーの集合時間があるので・・・」

 

    

 

 「あ~、もへじだ。あの野郎!」と、ツベルクリンがホテルの玄関に入ってくるもへじを見つけ眉を吊り上げた。手に持った旗の先のふなっしー人形が震えている。

 

 「あら、もへじさんその帽子、やっぱり?」とアメリッシュが言った。

 

「ううん、台風はそれたけど、それで暑くなるからって、ぼ、帽子が必要かなって、アーケード街に買いに行っていたんだよ」至極普通のようにもへじがテンション上げ気味に話した。

 

 「おすっ!」熱い男ニシガキが両手を握りこぶしにして腰から下で力を入れてゆすって「男は、朝からテンション上げちゃって行きましょう、もへじ爺さん」

 

 「ってい、誰がももへじ爺さんだい?」って笑いながらもへじが、それでも、この野郎後で見ておけよ、後ろから近付いて岬から海に突き落としてやるぞって思うともなしに思ったかもしれない。

 

「あの、ツアーのお客様で・・・」と、ホテルニュー奄美の係りの者が近づいてくる。「散歩中に、えっと、え、こんなものを瀬留川に落とされた方はいらっしゃいませんか?」手に何か金色の毛の塊を持ってツアー客に見せている。

 

 「たまたま当ホテルからアーケード街方向に行ったお客様がおられまして、同じくホテルから先にアーケード街に向かっていた方がいらして、先を歩いていたその方が川面を熱心に覗き込んでいまして、いや、その川は瀬留川って言うのですが、その時に頭から黄色いものを落とされて流されて行っちゃったそうですが、そのお客様がわざわざを拾いに行って下さって、釣り人がひっかけて吊り上げてくれたのを持ち帰ってくれたのです」*3

 

 「あっ」とホテルマン言うより先に、もへじがホテルマンからその黄色い塊を奪いトイレに駆け込んだ。一瞬、ホテルロビーにざわめきが起こった。

 

 「皆さん、静かに。人は色々なアクシデントに遭遇して生きているものなんです。たとえどぶの中に倒れても前向のめりに死にたいってのが人間です」って、アイリッシュのオババなる人物が低く通る声でぴしゃりと決めた。

 

 

 「や、やあ、皆さんお早うございます」と言ってトイレから出てきたもへじ。いつも通りに頭は金髪だった。

 

 ツアー客のそんな朝の騒動にも我関知せずで、ポジポジ子とストライクは後ろの方でいちゃついていた。

 

 それを注意深く観察する sayocom の目が光る。「あたしにだって小林さんがいるわ」

 

 

第五話 sakigake news 魁太朗 2019年7月11日

今回のツアーの一つの見どころ。

それは、「奄美大島一大リゾート開発プロジェクト」の現場視察だった。

奄美大島は、国家戦略として、観光特区に認められ、リゾート地として大規模な開発が進められていた。

もへじ率いるツアー御一行は、リゾート開発の現場に向かった。

そこにいたのは、女性作業員とイチャついている40代の現場監督だった。

その男は、爽やか風エロオヤジだった。

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この男、仕事中だというのに、女性作業員とべったりしている。

ツアーコンダクターのツベルクリンが、その男に話しかける。

 

ツベルクリン

「現場監督、お取り込み中のところ、すみませんが、

 ツアー御一行の皆さんが到着されました。

 今回の奄美大島リゾート開発プロジェクトについて、皆さんにご説明ください」

 

現場監督

「えー、皆さん、奄美大島リゾート開発プロジェクトの

 現地にお越しいただき、ありがとうございます。

 ここはまだ何もない更地ですが、ここからとてつもないリゾートが開発されます。

 そのリゾート開発は、カジノはもちろん、豪華宿泊施設も建設されます。

 また、先日、ここから温泉も湧き上がりウェルネスリゾートとしても・・・・・・」

 

現場監督が、もへじの金髪に目を止める。

やがて、話すのをやめた。

もへじのそばに近づいていく現場監督。

もへじの前に来るなり、足元から少し禿げかかった金髪まで見回す。

 

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現場監督

「もしかして、あなたは、もへじさんではありませんか!?」

 

もへじ

「いかにも、わたくすが もへじ でござんす。ってあんた誰?」

 

ヘルメットの男

「やっぱり!俺、もへじさんのファンなんすよ!

 いやー、奄美大島に来るってブログで見てたんですけど、

 まさか、本当に来るなんて。

 納豆料理、いつも参考にさせてもらってます!押忍❗」

 

もへじ

「わしゃ、ギャルとデカイケツは好物だけど、男はねぇ。

 ところで、お兄さん、誰よ?」

 

現場監督

「俺、みふけたって言います!」

 

それを聞いたアメリッシュが振り向く。

「え?みふけたって、あのみふけたさん?」

 

みふけた

「そうですよ!あなたがアメリッシュさんでしたか。ヨロシクっす!」

 

アメリッシュ

「でも、あなた、秋田に住んでらっしゃいましたよね?

 どうして、こんなところに?」

 

オババは何か不満そうだ。

オババはなんにも無い更地に連れてこられ、イラついている。

 

オババ

「秋田かい。あそこはど田舎じゃけんのう。

 上小阿仁村っていう、医者いじめの村も有名やさかい。

 だいたい、秋田って人いるのかいな?

 今日の魁新報で、全国最高の人口減少率って書いてあったぞい」

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みふけたは、そんなオババを無視し、アメリッシュに話をした。

 

みふけた

「いやぁ、ブログでも書きましたけど、

 7月から大プロジェクトを任されちゃいまして。

 先週、秋田から引っ越してきました。

 そのプロジェクトってのが、ここ奄美大島での

 リゾート開発プロジェクトだったんですよ。

 奄美大島は、LCCも就航したので、

 このプロジェクトで奄美大島がさらに発展していくんです」

 

そう、この男「みふけた」は、奄美大島一大リゾートの国家プロジェクト開発を任されていた現場監督だったのだ。

 

アメリッシュ

「あらま、そうだったの。奇遇ねぇ。

 でも、会えて良かったわ。

 どんな人か一度見てみたかったのよ」

 

もへじが、カツラ。(あ、失礼)

金髪をポリポリかきむしりながら、話しだした。

 

もへじ

「お二人さんが、知り合いだってのはわかったから、それはいいとして。

 それにしても、なんだろ、その、みふけたって呼びづらいなぁ」

 

もへじは、少し考えた。

 

もへじ

「うーん。反対から読むと

 ・・・たけふみ!

 こっちの方が呼びやすいなぁ。

 たけふみって呼ばせてもらえないかなぁ?

 漢字変換したら、一発目に武文 って出てきたので、以後は武文って書かせてくれ。

 いいかい?あんちゃん?」

 

武文

「は、はい!尊敬している もへじさんにそう呼んでもらえるなら、光栄ッス!押忍!」

 

待たされているアメリッシュのオババは相当イラついている。

 

オババ

「いいかげん、行こうや!この更地見て、何が観光やねん!

 お前らの自己紹介はいいけん。はよ、いこか」

 

もへじ

「オババはん、すんまへん。今スグ行きますがな

 もうちょい、待ってぇなぁ」

 

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ここ奄美大島では、世紀の一大リゾート開発が行われていた。

近年日本は、急速的に人口減少が進み、経済は衰退に向かっている。

経済を復活させるためには、「観光」がキーワードとなる。

観光地を作り、県外はもとより、海外から富裕層を呼び込む。

そして、地方に金を落としてもらう。

そのため、地方自治体は生き残りをかけ、我先にと観光開発に力を入れている。

 

幸い、ここ奄美大島では、日本政府より観光戦略特区に指定されたため、国から多額の補助金が交付され、一大リゾート開発プロジェクトを進めることができている。

つまり、奄美大島は、他の地方自治体との競争に勝つことができたのである。

 今後、他の自治体は、さらに衰退が加速されるだろう。

しかし、奄美大島は生き残れることができた。

 

補助金には、多くの政治家、財界人の努力によって、交付が決定された。

もちろん、黒い金が動いたことは言うまでもあるまい。

大規模な開発プロジェクトの裏には、必ず黒い金が動く。

その黒い金により、日本社会のどこかに歪みがくる。

そう、黒い金の背後には、必ず犠牲になる者がいる。

 

実は、その犠牲者の一人が、まままっこりの旦那である。

まままっこりの旦那は、かつて、一流料亭の料理長だった。

その一流料亭は、上級国民クラスしか入店が許されていない。

この料亭での密会は、マスコミにバレることが、けして無いのである。

完全紹介予約制で、一ヶ月に10日しか店を開けていない。

経営者は、奄美大島で様々な事業を営む大金持ちである。

 

ある日の夕方、いつものように料理の仕込みをしていた まままっこりの夫。

ガラガラっとドアが開いた。

そこに立っていたのは、二人の刑事だった。

 

刑事

「あんた、まままっこりの旦那だね?

 あんたに容疑がかかっている。

 善意の市民から、タレコミがあったもんでさぁ。

 あんた、ちょっと、署に同行してもらうよ」

 

強引な刑事は、有無を言わさず手をつかみ、まままっこりの夫をパトカーに乗せた。

 

まままっこりの夫

「刑事さん、これ、なんですか?捜査令状あるんですか?」

 

刑事はお構いなしに、警察署に向かう。

取調室に連れて行かれた、まままっこりの夫。

午後11時過ぎ、まままっこりの夫は開放されたようだ。

 

しかし、この取り調べは1週間、続いた。

そして、ついにまままっこりの夫は落ちた。

まったく見に覚えのない、まままっこりの夫は、逮捕されてしまった。

心身ともに疲れ果てたのであろう。

意識が朦朧としたのであろう。

取調室という密室で何が起こったのか、想像に難くない。

自白強要されて、やってもいないことをやったことにされてしまったのだ。

 

まままっこりの夫にかけらた容疑はなんだったのか?

それは、「収賄罪」である。

一般人が公務員に賄賂を贈る行為、それが収賄罪。

まままっこりの夫は、リゾート開発担当官庁の幹部に賄賂を渡していた。

という容疑をかけられ、自白強要され、落ちてしまった。

なぜ、こんなことになってしまったのか?

まったくの冤罪である。

まままっこりの夫は、自分がなぜ、嵌められたのかわからない。

なんの落ち度もない、一市民がなぜ?

 

国家規模の開発プロジェクトには黒い金が動く。

黒い金の裏には、歪みがある、犠牲者がいる。

まままっこりの夫は犠牲者だった。

しかし、まままっこりの夫は、そのことを悔やんではいない。

なぜか?

それは、奄美大島の発展のためには、仕方のないことだったから。

自分が落ちることで、島の発展につながるのなら。

子どもたちの未来につながるなら、自分が犠牲になってもいい。

そう思って、やってもいないことを自白したらしい。

 

一体、誰が黒幕なのか?

サキガケこと、本名・魁太郎は、反骨心を持った生粋のジャーナリストである。

今回の一連のリゾート開発プロジェクトの黒い噂を聞きつけ、奄美大島にやってきた。

関係者に取材の結果、少しずつ事件の概要が明るみになってきた。

 

このあと、話は風雲急を告げる。

そう、今の混沌とした政界のように。

その大きなうねりが、本土から、風に乗って奄美大島にやってくる。

何がやってくるのか?

はたまた、誰がやってくるのか?

 

第六話 ほおずきれいこ (id:hoozukireiko)  2019年7月12日

 

余禄:

今までのお話のあらすじ

ツベルクリン率いる奄美大島観光ツアーに参加しているもへじ。一度は行方不明となるが、無事合流。観光ツアーの目的には、リゾート開発予定地の見学が含まれていた。

登場人物 もへじ、ツベルクリン、ニシガキ(ナオキ・ニシガキ)、トマレ(Dr. トマレ)、オイチ、アメリッシュ、アメリッシュの姑オババ、アメリッシュの叔母、その娘優ちゃん、優ちゃんの彼氏太郎君、はぐれいぬ、え子(ecoplace)、ポジポジ子、その彼氏ストライク、サキガケ(sakigake news)、sayocom、ほおずきれいこ、武文(ふみけた)

登場人物の詳細は第1回目をごらんください。 

第6話 え子(ecoplace)は見た

 

釣りをしていた男はツアー客に金色の頭髪らしき物体をまかせると、ツアー客が騒いでいるうちに、こっそりと自宅に戻った。

男は、妻まりこのパソコンを勝手に調べる決心をしていた。

あやしい、絶対に。

男はまりこの浮気を疑っていた。

まりこはブログをやっている。

ブログを書いているときのまりこは生き生きしていて、なんとも楽しそうだ。

俺の知らないところで、まりこは男と連絡を取り合っているのではないか。

そのうち、ふたりきりで会ったりしないか。

男は心配でたまらなかった。

心配であったから、毎日、まりこのブログをスマホで読んでいた。

コメント欄にコメントを書いているのが、男か女かをチェックするため、コメントを付けた人のブログまで読みに行っていた。

男は「もへじ」という男がまりこに惚れていて、奄美大島まで旅行に来ることをもへじのブログを読んで知っていた。

もへじという男のブログ、ユーモアがあって非常におもしろい。

男には文才がなかったから、そのことが非常にくやしかった。

そして、その才能によって人々を魅了していることが憎らしかった。

 

まりこのパソコンを調べる。

そう決心して、家に帰ると、まりこがいた。

 

「あれ? 仕事じゃなかったのか?」男は言った。

「うん。シフトかわってもらった。ブログ仲間にもへじさんってのがいてね。いま、奄美にきてるんだって。東京のお土産渡したいからうちに来るって。いいよね?」

「ああ、ふーん。もへじさんっていう人が。どんな人だろうねえ」

男はもへじのことをブログを読んで熟知していたが、関心ないふりをした。

動揺を隠すため、男は「ちょっと買い物に行ってくる。せっかくもへじさんがはるばる東京から来られるんだから、なにかご馳走つくらなぁ」と言って家を出た。

 

 

え子(ecoplace)は奄美大島のスーパーでレジ係をやっている。さっき、あわてた様子の男が鯵としょうがとねぎを買いに来たところだった。

 

そして、今、禿げた男がえ子(ecoplace)の前にいる。

「すみませんが、帽子はこのスーパーには、売ってないですよね……」

 

禿げた男は、何軒もお店をまわり、かっこいい帽子を探していた。

その男のお眼鏡にかなう帽子はこの島には売ってないかもしれなかった。

あきらめかけていたその時、見つけたのが、このスーパーだった。

「ちょうど、入荷したところです」え子(ecoplace)は言った。

それはまさに、奇跡だった。たまたま、この食品スーパーに入荷したのだ。

しかも、かっこいいキャップが。

男の好みにぴったりだった。

男は、値札を切ってもらうとすぐ帽子をかぶって颯爽と店をあとにした。

え子(ecoplace)は確信した。この男、これから女に会いにいくはずだと。

 

余禄2: 

このあとの展開はご存じのとおりです。 

ecoplaceさんを出演させたかったので、ちょっと時間をさかのぼりました

 

第七話 もへじ 2019年7月13日

 

 某年某月某日:東京・とある一流料亭

 

 奄美大島のボスと称される事業家が上座にどっしりと腰を下ろしている。奄美大島のボスは政財界にも太いコネがあり首相さえ「あべっち」と呼んでいる。

 

 下座には政治家を含む数々のフィクサーの面々。

 

 このような政治フィクサー的ゴロが、実は日本という国を動かしているなどとは誰も知らない。

 

 国会などは猿芝居の場所であって、裏で決まったことを粛々と決議して公式に発布施行するだけの一般的国民に向けたお飾りなのだ。

 

 野党も野党の主だったものが、その猿芝居を演じているに過ぎないのだ。

 

 テーブルにはこれい以上はあり得ないほどの高級食材を使った料亭料理がすでに運ばれ出している。

 

 「ほお、新しく料理長に抜擢した男か・・・」奄美のボスは言葉を落とした。

 

 「うむ、挨拶に来させろ、連れてこい」

 

  「殿、承知いたしました」女将がそう答えると、下の者がすぐさま厨房へ飛んで行った。

 

 「お初にお目通りいたします。このたび料理長を仰せつかりました鰻と申します。お殿様にお出しするお品としてはお口汚しのようなものでございましょうが、これが私の力量でございます。失礼がありましたらどうぞ平にご容赦くださいませ」と畳に額を擦り付けんばかりにして恐縮している。

 

 それでも言葉がすらすらと言えているということは、殿に呼ばれた時の挨拶言葉を女将に言われて練習していたものと思われる。

 

 「なんと、お前は『鰻』というのか、これはけったいな名じゃのう。そんな嘘みたいな苗字がこの世にあるとは、はは、面白いのう」

 

 「けったいな名で恐縮でございます」と鰻。

 

 「いやいや、責めているのではない、面白いと思うただけじゃ」

 

 「は、お殿様にお喜びいただけとてもうれしくありがたきことでございます」

 

 「うむ、して、この突き出しの飾りのこの流木は、お前のアイディアか?」

 

 「は、出が奄美大島でございます故、海釣りの時などに形の良いものを拾い集めていたものでございます」

 

 「あ、いや、お殿様にお出しする前に、24時間煮沸、天日で45日干し上げたものでございますので清潔でございます」と、鰻が怒られると思って続けていいわけ気味に話す。

 

 「おおそうか、いや、わしも奄美の生まれぞ。はげー奄美の海辺の美しさはよう知っておる。どこの出じゃ?」

 

 「元は鹿児島からと聞いておりますが、今は瀬古に住んでおります」

 

 「すれば、お前は、薩摩の名族の中臣鎌足天智天皇より賜ったことに始まる隆家流菊池氏族の末裔ではないのか?」

 

 「氏族などととんでもありませぬ、ただの没落家系です。この苗字はもう私と兄弟だけしか存命しておりません。子はいても継ぐ者はおりませぬ」

 

 「そうであったか、時代とは惨いものよのう」

 

 「聞け、皆の者。この料理長は鹿児島の名門なるぞ。時が時ならば、わしよりこやつの方がよっぽど殿様じゃぜ、あはっはっはっははは」と豪壮に殿と呼ばれる男が笑い飛ばす。

 

 恐れ多いことと鰻は本当に額を畳に擦り付けてしまった。「没落家系など、なんの値打ちもありはせぬ」と、心の中で鰻は吠えた。

 

 下の席の者は何と答えてよいのか苦笑い的にお追従笑いをするのみであった。

 

 ひとしきりの座が切れて女将が「鰻、これにてお下がり」と、皆に分かるように告げる。

 

 「ありがっさまりょうた」と平伏しながら鰻は席を後にした。

 

 殿と呼ばれる男は「料理長が『鰻』とは、あまりに変わっていて印象に残り過ぎる」と思いを巡らし顔が曇る。「危険性は排除するに限るか、そうやってわしは生きてきたのだ」と決意し、空を見た目が一瞬光った。

 

 殿と呼ばれた男は傍にいるボーディーガードらしき男に耳打ちをする。「あいつを呼べ、鰻をこの料亭から排除し、何か罪を着せて前科者にしておけ、いいな」

 殿と呼ばれた男、「わしが政財界のやつらと密会していたことが、鰻などと言う珍しい名前からなにかの拍子で表立たになっては困るのだ。何の因果もないが、ここは消えてもらうしかないだろう。鰻などと、ふざけすぎおるわい」と、独り言ちた。

 

余禄: 

これは背景説明のエピソード的な物語です。

今回は、まままこりさんのご主人が魁太朗によって「収賄罪」wとさせられたけど、自白調書を書けば検挙しないと言われかろうじて前科一般は逃れ、その代償として料亭を追い出され奄美大島に戻って料理店を開いたのですが、奄美での料理店を止める遠因として二人の刑事に付きまとわれて結果的に廃業となり、やがて荒れ狂った生活となった背景も考えて創作してみました。

第4話「まままっこり家」にも繋がる背景的内容になっています。

本日は少し外出予定があり、出かける前のどさくさしている中で書きましたので、整合性が無かったり誤字脱字は帰宅後修正します。それと料亭のシーンをもう少しお話を細かく描写してみようかなとも思っています。

 

第八話 ほおずきれいこ (id:hoozukireiko)  2019年7月16日

余禄:1

今までのお話のあらすじ

ツベルクリン率いる奄美大島観光ツアーに参加しているもへじ。一度は行方不明となるが、無事合流。観光ツアーの目的には、リゾート開発予定地の見学が含まれていた。

 

第8話 はぐれいぬは幻の山菜を求めて

はぐれいぬは、奄美大島に山菜をとりにきていた。

街も人もまだ動き出す前の早朝、人目を忍んで山に入った。

ネット情報では、そこは山菜の宝庫であった。

しかし、そこは私有地であったから、見つかれば不法侵入・窃盗罪になる。

はぐれいぬは、そんな危険を冒してでもどうしても食べたい幻の山菜があった。

幻の「アマミオオタニワタリ」というシダ植物だ。

それは、奄美大島だけに生育し、絶滅危惧に指定されている。食べるなんてもってのほか。

しかし、山菜マニアの間では絶品と噂されていた。

一度食べた者はその魅力に取りつかれるほどだという。

食べ過ぎると、あの世行きになるという危険もある。
食べ過ぎなければ、非常にいい夢が見られるそうだ。起きながらにして。

 

そんな「アマミオオタニワタリ」を求めて、はるばる奄美大島に来たのだった。

「アマミオオタニワタリ」を探して、三日目になる。

はぐれいぬは、山に入る時間を日の出から1時間と決めていた。

腕時計に目をやると、そろそろ出なければならない時間になっていた。

今日も、収穫はゼロだった。明日の飛行機を予約しているので、チャンスはもう明日の朝しかない。

帰ろうとして視線を上げたそのとき、うしろに気配を感じた。

 

「そこで、なにをしているのですか」

振りかえると、大きな帽子に、大きなサングラス、マスク、長袖のカーディガンに手袋、ロングスカートの人が立っていた。身長は高くない。

はぐれいぬは、その人物を女と判断したが、実際はわからない。

声と髪型から女と思われるが、ほとんど肌を露出させてないので顔かたちもわからない。
であるから、男という可能性もあった。

 

「わたくしの土地で何をしているのです」女(仮)は言った。

「すっ、すいません。道に迷いまして。いっ、いま帰ります」

はぐれいぬは焦りのあまり、矛盾したことを口走った。

急いで立ち去ろうとしたとき、女(仮)は言った。

「まちなさい。あなたの探しているものは、これじゃないですか」と持っていたカゴの中身をはぐれいぬに見せた。

はぐれいぬは絶句した。三日間探して見つからなかったものが目の前にあった。

それは幻のアマミオオタニワタリだった。

「これをあなたに半分さしあげます。そのかわり、少しわたくしの手伝いをしていただけませんか。それとも不法侵入罪で警察に行きたいですか?」

 

第九話 もへじ 2019年7月18日

隠れ集落に潜む闇 

  

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

 

太鼓なのか?

 

太鼓を規則正しく打つリズムの音が聞こえる。

 

その太鼓の音が段々と大きくなってくる。

 

ざわっと女が茂る葉を払うと視界が明るくなった。開けたところに出たみたいだ。

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

 

 明らかに、太鼓の音が力強くなった。

 

鬼灯様じゃぁ!

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

 

鬼灯様がお戻りになられたぞ~

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…

 

鬼灯様じゃ、鬼灯様、鬼灯様、鬼灯さまと、口々に出す声とともに、鬼灯様と言われた人の周りにわらわらと人が集まって来る。

 

どんどこどんどこどんどんどんどこどんどんどんどんどんどこ…打つ太鼓の音が段々と小さくなってフェードアウトするようなり、やがて止まった。

 

誰かが「ご寵愛を…」と言った。

 

その言葉をきっかけに皆が、ご寵愛を下せえ、ご寵愛を、ご寵愛をわしにも賜れませと鬼灯様の周りに十数人の男が地に座し手を上にあげ、謎の人物に手のひらを向けてご寵愛を求めている。

 

大きな帽子に大きなサングラス。マスク、長袖のカーディガンに手袋。さらに奄美大島だというのに、先ほど迄山歩きをしていたはずなのにロングスカートの人物は「しょうがない子たちね、さあお食べ」と言って、手袋を外してはぐれいぬが三日間探して見つけることが出来なかったアマミオオタニワタリの葉を一口大にちぎり差し出された手の上に乗せていた。

 

なんてことするんだこの人は、いやこの女(ひと)は。

 

貴重なアマミオオタニワタリという幻の食材をとはぐれいぬは思った。アマミオオタニワタリ葉の緑に何とも美しい手が映え、ちょうど陽の光が差し込んで、それは神々しい姿にさえ見えた。

 

一瞬、女のカゴを奪おうかとさえ思ったが、この集落にいる男どもは高齢者だが、それでも十数人を敵に回してははぐれいぬには逃げるすべがない。

 

この女が持っているアマミオオタニワタリは何よりもおれも食べたい。が、そこははぐれいぬはまだ耐えるだけの矜持を持っていた。

 

鬼灯から受け取ったアマミオオタニワタリを男どもは焦るように口に含むと、もぞもぞとガムでも噛むかのように口を動かしていた。その動かしていた口が、唇に力が失われ弛緩したかのようになると、男どもは恍惚とした表情をその眼に浮かべていた。

 

なんなのだこれは、いったい!

 

はぐれいぬは思った「アマミオオタニワタリを食せば、起きながらいい夢が見られるらしいとはこのことなのか、それほどに絶品な味なのか」と、いくらなんでもこの有様を見るまでは、そんなことは幻のアマミオオタニワタリのことゆえに吹聴的な逸話となっているのであろうと思っていたのに。

 

その光景を見てははぐれいぬはたまらず地に座し、手のひらを天に向けて「ご寵愛を」と鬼灯様に言っていた。

 

それから数か月・・・

 

はぐれいぬはハウス内農作業に就いていた。

 

自分にはいつの間にかこの集落の中に取り込まれ、なんとアマミオオタニワタリをクローン培養する温室のハウス内下僕として働かされていたのだ。

 

はぐれいぬは何度か脱走を試みた。

 

深夜、早朝、日中、いずれの脱走も失敗してしまった。

 

予約してあったフライトなどのことは遠い昔のことのことのような気もする。

 

一日の作業が終わっての、一切れのアマミオオタニワタリの葉が支給されると、何もかもどうでもよくなってしまうのだ。

 

しかし、これはおかしい。

 

これは明らかに覚醒作用だ。

 

はぐれいぬはそれからは、アマミオオタニワタリの葉片は食べたふりをして、食べることはなかった。

 

葉片を同じ下僕仲間に与え、引き換えにこの集落の情報収集をしていた。もちろん見張りがいる時は、葉片を食べたふりをし、恍惚っぽい顔を演じて見せた。

 

ある時、白衣の女がやってきた。

 

白衣の女はどうやら植物工学のエキスパートのようである。

 

情報集めのためにクローンラボ内の下僕係とその仕事を代わってもらった。こんな時にアマミオオタニワタリの葉片が役に立つ。

 

最先端と思われる植物栽培クローン施設は厳重な無菌状態にとなっている。クローン培地にカビや大豆菌などが一粒でも落ちれば、栄養満点の培地なのでクローンする植物よりもカビの方があっという間に培地を覆ってしまう。そんなことが起きないための無菌室だ。

 

はぐれいぬは三か所の消毒室を経てアマミオオタニワタリ培養のクローン室に入った。ここでの作業はクローン作業がしやすいようにと手はずを整え、研究者の手伝いをすることだ。いつもは二人ぐらいのスタッフなのだが、今日は応援も来ているのか5-6名の研究者が集まっている。

 

そのクローン室に外部からやってきた白衣の女が現れたのだ。

 

何か情報を引き出すにはこの最大のチャンスは外せない。白衣の女は度の厚そうな丸眼鏡をしていた。そして、ぶつぶつと、「STAP細胞・・・あ、ありますよぉ」と呟いていた。

 

なぜに、アマミオオタニワタリに人を恍惚とさせるような成分があるのだ。

 

はぐれいぬとて植物の中には幻覚作用を起こさせるものがあることは知っている。いわゆる植物の持つ植物が身を守るための毒物がそれだ。しかしながらアマミオオタニワタリにそんな成分はない。

 

鬼灯がなぜ、アマミオオタニワタリで下働きの下僕を自在に操ることが出来るのか、その秘密の一端を知りたいのだ。

 

その時「そうね、じゃあ植物の持つ毒性について今日は一から講義してあげるわよぉ」と白衣の女が喋った。なに、この女テレパシーでもあるのか?

 

「そこの下働きのあなたも聞きなさいよぉ」と白衣の女ははぐれいぬにも声をかけた。

 

はぐれいぬは指で自分を差し頭を振ったが、「いいから、利発そうないい顔しているじゃないよぉ」と、白衣の女はおれの腕をとった。

 

相手の要求する反対行動をすることが、簡単なテクニックだけど案外逆に思っている通りになるのだ。

 

研究員の誰かによって聴講生のように椅子に座らされた。「ふっ、願ったり叶ったりだ(w」と、はぐれいぬはマスクの下でほくそ笑んだ。

 

研究員の代表と思われる者が「Dr.トマレ、それは光栄に思います。我らまだ植物工学における植物に対する知識が実際のところ低いので、ドクターのように最先端の技術によって植物の持つ様々な機能の遺伝子組み換え技術をご教授願いたいのです。さあ始めてください」と促した。

 

 

「そうね、例えばマンダラゲとトリカブトの毒性を利用して花岡青洲は麻酔薬を作りましたよぉ。これが江戸時代のことですよぉ。江戸時代ですよぉ。

 

凄いですよぉね。えー、マンダラゲとは朝鮮朝顔のことでありますよぉ。

 

これの仲間のエンゼルストランペットというラッパ型の大きな花を下垂させて咲かせる草本の種子も幻覚作用がありますよぉ、その服用によって昏睡状態になって救急車で運ばれる事件も人知れずあるのだよぉ。

 

植物ではないが皆さんがよく知っている毒キノコだってそうですよぉ。幻覚物質のグレーゾーンで、幻覚きのこでマジックマッシュルームが話題になったこともありますよぉ。麻薬原料植物として規制対象ですよぉ。

 

生け垣などに植えてある夾竹桃でさえ、その枝で間に合わせの箸にして食事をしたりすると、夾竹桃の成分が体内に取り込まれるだけで昏睡状態となり、人によっては命に危機が訪れることもあるんですよぉ。

 

アサガオの花は夏の朝日に映えてきれいですよぉ。アサガオの種は漢方では下剤にもなるんのですよぉですが、実はこれは貧乏人の幻覚剤としても知る人ぞ知るなのだよぉ。

 

アサガオの種には下剤効果があるので、これでトリップするときは風呂場を利用するとからしいのだよぉ。あれは糞垂らしながらクソトリップだったわよぉ。わ、私はそんな実験はしたことはありませんよぉ。

 

我々の同胞でもあったアジア人は氷河期時代に凍り付いていたアリューシャン列島を渡ってナウマンゾウを追いかけて中南米にまで広がって移住しましたよぉ。それが現地インディオことアメリカ大陸先住民ですよぉ。

 

我らの仲間のその中南米インディオ・アパッチは、ペヨーテことロフォフォラ属で砂漠みたいなところに生えている烏羽玉というサボテンの一種を乾燥させて、乾燥ロフォフォラを食べ麻薬作用をアパッチが儀式の際に用いたりしていた事実がありますよぉ。

 

この烏羽玉にあるメスカリンは、国際的に規制され日本でも法律上の麻薬に指定されていますよぉ。烏羽玉は国内でも容易に手に入るサボテンですが、現地の烏羽玉にしかメスカリンという麻薬物質はないのですよぉ。

 

しかあし、私 Dr.トマレは現地球のロフォフォラ属から、メスカリンを生成する遺伝子の発見に成功したのですよぉ。すごいですよぉ。この遺伝子をアマミオオタニワタリ移植したのがこのDr.トマレなのですよぉ。

 

色々な植物の組み合わせを試してみたのですが、アマミオオタニワタリのみが高濃度でメスカリンを生成することが出来たのですよぉ。ここがそのメスカリン・アマミオオタニワタリのクローン工場なのですよぉ。

 

私Dr.トマレと鬼灯様はメスカリン・アマミオオタニワタリで、なんと、世界征服をも目論んでいるのですよぉ。いひっひひひっひひひひひひっ!」と、Dr.トマレは話していて、やがて自分の話に自分で興奮してきたらしく、人差し指を鼻の孔に突っ込んで鼻くそを掘り出し、その鼻くそを眉毛に付けにたついていた。

  

はぐれいぬは追い求めていたアマミオオタニワタリの幻覚作用の秘密を知ることがやっとできたのだ。はぐれいぬは深夜になって偽歯に仕込んだ通信機器で魁にこの情報を伝えていた。

 

◇◇◇◇◇◇ 

 

魁はすぐに動いた。

 

はぐれいぬの偽歯通信機器からの電波で場所も特定できた。

 

数年来からの高齢者の失踪とアマミオオタニワタリによる不思議な事件の遠因を探ってきた魁は、奄美大島にアマミオオタニワタリを培養している秘密組織の隠れ集落があるとの情報を得て潜入捜査としてはぐれいぬを送り込んだのだった。

 

魁は sayocom と共に、秘密組織の現地隠れ集落に飛んだ。

 

もちろん潜入捜査員のはぐれいぬの救出のためだ。

 

「やったな」魁。

 

「はい。魁さん、 sayocom さん。お二人でのお迎えありがとうございます」

 

「なに、言ってんのかしら。お仕事よ、仲間だし」と sayocom がウィンクする。

 

「じゃあ、太郎とはぐれいぬはこのまま離脱して。危険なことはあたしたちに任せて。この後、特殊部隊がここでのことは何もなかったことにするわ」

 

「太郎、魁。ここの記事を書くときはそれとなくぼかしつつよろしくね」と、またしてもウィンクし唇をチュッとするように二人に向けて尖らせた。

 

魁もはぐれいぬも、後は sayocom がここをきれいに、本当に何もなかったの如くに一掃してくれることだろうと分かっていた。

 

◇◇◇◇◇◇ 

 

秋田県仙北市角館町。角館温泉花葉館にてきりたんぽ鍋を食べた三人は、満足げにそれぞれのスタイルでくつろいでいた。

 

「しかしあの鬼灯様とは何者だったんだろうなあ。アマミオオタニワタリの葉をちぎる手が、とてもきれいだった。声は低く良く通る感じだったので、歌もうまいんじゃないかなあ」と、はぐれいぬは呟くように言う。

 

引き継いで sayocom が、「大きな帽子に大きなサングラスでマスクでしょう。それに長袖のカーディガンに手袋して、奄美大島でロングスカートだった人物はどうしても特定できないのよ」と言った。

 

魁が「Dr.トマレなる人物と思しき者もいなくはない。同じ医者だが、彼女歯医者なのだ。それにどちらかというと物静かで人前でしゃしゃり出て講義講釈を垂れたりする人物ではない。この辺はまだ調査を続ける。なんにしてもだが、あの事件をものにしたおかげで、俺は世間の注目を集めることが出来た。今やちょっとしたインフルエンサーだ」

 

「魁先輩は、インフルエンサーじゃなくて、風邪の菌を撒き散らかすインフルエンザーの方じゃないんですか」なんて、はぐれいぬが茶化す。

 

 sayocom が笑いながら「それにしても、あの秘密基地の人たちは高齢者ばかりだったわ。どうやら鬼灯様とやらをナンパしたつもりが逆に誘拐され、秘密基地で下僕にされたみたいなのね。あのおじいちゃんたちの秘密基地での記憶は全て消してから解放したの、だから安心して。でも、男は幾つになっても懲りないわね」と、さらに「お二人も、鼻の下を長くして私のビキニ姿を見てるんじゃないのよ。あたし、これからひと風呂浴びてくるんだから」と、帰国子女らしく温泉にビキニで入るつもりだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

奄美大島名瀬市のアーケード街の中を、電動チャリに古い子供用補助席を付けた女が颯爽と通り過ぎる。それを見た爺と言うにはやや早いしかし高齢者には間違い男どもが、過ぎ去る電動チャリの後を追うよう見つめている

 

アマミオオタニワタリの緩いフラッシュバック的な深層心理反応の残像なのだろうかのか。

 

その中にひとり、金髪の男がふらふらと、走り去り行く電動チャリの方向に手のひらを差し出し・・・

 

「ご寵愛を…」

 

第十話 ほおずきれいこ (id:hoozukireiko)  2019年7月21日

余禄1:

第1話から第9話までのお話のあらすじ

ツベルクリン率いる奄美大島観光ツアーに参加しているもへじ。一度は行方不明となるが、無事合流。観光ツアーの目的には、リゾート開発予定地の見学が含まれていた。

リゾート開発にまつわる黒い金や隠された真実を暴くためジャーナリスト魁太郎とCIA諜報員のsayoconが動く。はぐれいぬも魁太郎たちの仲間だったことが判明。

 

第10話 ついに殺人事件か!?なくなった刀

「じゃ、いってくる」

そう言うと、妻まりこは仕事に出ていった。

実は男は気になることがあった。

まりこのブログに余白の多いものがある。

余白部分に何かが隠れているのではないか、

パソコンで見ないとわからない何かが。

初めは浮気を疑っていたが、実際にもへじ氏と会ってみて杞憂だったことがわかった。

浮気なら、こそこそ会うはずだし、俺のほうが若いし、断然かっこいい。

まりこが浮気するわけがない。男は自分の浅はかさを恥じた。

 

もへじ氏は、今日わが家を訪問してきたので、鯵の寿司をご馳走した。

彼は俺の腕前に舌をまき、早々にホテルに戻った。

寿司も食べずに。

いや、食べさせなかったというほうが、正しいか。

大人気なかったかもしれないが、ささやかな抵抗だ。

俺の妻にちょっかいを出してくるやつはゆるさねぇ。

 

いま、まりこは仕事に出かけた。遅番なので、夜9時までは帰ってこない。パソコンを調べるなら、今だ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

まりこはホテルのフロントで働いていた。もへじらが泊まっている奄美ニユーホテルだ。

「おかえりなさいませ」

フロントのまりこがいった。

ツベルクリン率いる一行が帰って来たのだ。今日はリゾート開発予定地の見学に行ったはずだ。まりこは知っていた。

 

夜9時。

男は妻の帰りを待っていた。

ガチャガチャ・・・鍵を開ける音。

「ただいまぁ~」

まりこが帰ってきた。

その直後だった。警察官二人が強引に入ってきた。

「もへじ氏殺害容疑で逮捕する」と言って、

男の名前の入った逮捕状を見せたのだ。

「凶器におまえの指紋も残っている」

「凶器はおまえの家にあった刀だと判明している」

 

 

いつのまにか床の間の刀はなくなっていた。

なぜ、パンツしか切れないはずの刀が凶器に?

男は意味がわからなかった。

「まってください。おとーが何をしたっていうのですか」

「とにかく、逮捕状が出てるんだ。署まできてもらう」

男はふたりの警察官に連れて行かれてしまった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

まりこは、闇の組織に夫の命が狙われていることを、魁太郎から聞いて知っていた。

その昔、賄賂を受け取った現場に料理長として同席していたまりこの夫は大事な証人だ。

黒幕が動いている――そんな情報を得た魁太郎たちが、証人を守るためにとった手段が留置場に入れることだった。だから、まりこも協力した。

証人を保護するため、警察をも動かす何か強大な力が働いたのだ。

 

夫の冤罪事件を調査する魁太郎とブログで知り合ってから、まりこも事件解明に協力するようになっていた。魁太郎、sayocon、はぐれいぬ、まりこ・・・他にもいるかもしれない。一般のツアー客として仮面を被り、この奄美旅行に参加している可能性もある。

 

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 そのころ、もへじは何も知らず、ホテルの部屋でくつろいでいた――。

もちろん、もへじ氏殺害のニュースなんて報道されることはなかった。

 

余禄2:

第11話につづく

 

 さあ、あなたなら、この続きどう料理しますか?

 ブログの余白に隠された謎とは?

 

 

最終回 もへじ 2019年7月21日 

余禄1:

登場人物

もへじ、ツベルクリン、ニシガキ(ナオキ・ニシガキ)、トマレ(Dr. トマレ)、オイチ、アメリッシュ、アメリッシュの姑オババ、アメリッシュの叔母、その娘優ちゃん、優ちゃんの彼氏太郎君、はぐれいぬ、え子(ecoplace)、ポジポジ子、その彼氏ストライク、魁太朗(sakigake news)、sayocom、ほおずきれいこ、武文(ふみけた)、まりこ(まままっこり)、まりこの夫(鰻)、大物フィクサー(当)

 

◇◇◇◇◇◇

 

ツアー観光旅行のはずがなんだか、リゾート開発予定地の見学なんていったい誰がこんな観光計画を立てたんだ。添乗員のツベルクリンが、バックマージンでも貰って急遽あんなところへ観光案内をしたのかななんて疑ってもみた。

 

リゾート開発が成ればツアー観光客を呼び込む一助となり、奄美大島に多くの観光客が訪れるし、リゾートマンション群も販売されたりすれば巨額の金が動くはずだ。まさかソフトクリーム一個に釣られてなんてわけでもないだろうと考え、そんな光景をイメージしたのかもへじが苦笑い気味に右端の唇を引き上げてふっと息を吐いた。

 

既に完成しているリゾート地に行くならいざ知らず、ああ、なんだか疲れた。今夜は外に食事をしに行く気もないなあ。

 

観光バスを降りたもへじは部屋に戻らずに、瀬古のアーケード街に向かって歩いて行った。帽子を買ったグリーンストアーで何か夕食を見繕ってニューホテル奄美の部屋でテレビでも見ながら今日の疲れを癒そうと思った。

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え子といったかなあ、あのレジの店員。

 

今朝の帽子の件といい、なにか出来合いを買ってホテルで食事をしたいんだなんて言ったら、寿司とこの豚足の煮つけがおすすめですよなんて教えてくれた。寿司、そう寿司は食べたかった。

 

鯵の寿司を食べそこなったというか、まりこの亭主との鰻とかいうやつは変わった野郎だったなあ。俺の為に鯵寿司を用意したといいながら夫婦でのろけながらその鯵寿司を二人で全部食っちまいやがった。

 

せっかく東京ばな奈をお土産に持って行って、都会の雰囲気っちゅうやつをばだな、嗅がせてやろって持参したのに、東京ばな奈は返して欲しかったわふんとにもう。あれ、JR八王子駅で買っといたやつだけど。

 

部屋に戻ってきたもへじは、早速に風呂にお湯を溜めた。

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え子というレジ係がすすめてくれた寿司と豚足が意外に美味そうだ。

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え子と名札が付いていたレジ係はなんとなく影がある感じだったが、それでも前向きに人生に向かって正直に生きている感じがした。接客にも他人行儀な一律対応じゃなく、人に合わせて臨機応変に処している様子が伺えて好印象が持てた。

 

観光で訪れた酒造メーカーの浜千鳥会館で高倉というアルコール度数30度の焼酎を買ってきてある。お土産じゃなくこれは自分用だ。30度だからウィースキーから比べたら度数は低い。もへじはウィスキーをショットで飲むタイプだ。だから30度ぐらいの高倉ならアルコール度数が低いくらいだ。

 

寿司を食べ、焼酎をくいっと飲みこむ。30度とはいえ薄めない焼酎がのど元過ぎたあたりからかっとなって広がる。ああ、アルコールが五臓六腑に落ちて行くこの感触がたまらない。ビールや薄めた焼酎にウィスキーの水割りなどではこの感触は得られない。

 

豚足が油っぽそうだなと思いつつ豚足を齧るとこれがまた油の香りや匂いが全くなくて、何か別物のゼラチン物質を食べている感じで、ゼラチン物質なんだけど肉の味がしっかりして美味しい。

 

えっ、豚足ってこんなに美味しいのか。沖縄料理の豚足ともまた違って豚足なのにさっぱりしている。沖縄のおでん屋ではおでんに豚足も入れるのだが、おでん全体に豚肉の豚足特有の油臭がする感じがして自分にはちょっといけなかったけど、奄美大島の豚足は豚足の豚肉臭さがないのだ。

 

これは初日の夕食会場の吟亭での豚足でもそう感じた。吟亭の豚足は厚揚げや人参大根昆布などの煮物の中に入っていた。全く豚足臭がしない。吟亭の豚足もうまかった。これは流石に、苦労したと思える雰囲気を隠しつつも明るく生きている感じのするえ子がすすめてくれたわけだな。

 

焼酎の高倉もこの豚足で味がより引き立つので、ついもう一杯と余分に飲んでしまう。

 

おう、そうだ、台風じゃなくてまだ熱帯低気圧だが奄美大島方向にも近づいて来てるのだ、明日の天気はどうかなテレビでも点けてみるとするか。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「お~う、はち。どうしたんだそんな陰気な顔をして、駄目じゃないかいもっとにっこりしてなくちゃいけないよ」

 

「いやねえ、ご隠居。さっきそこで大捕り物がありやしたんでさ」

  

◇◇◇◇◇◇

 

なんだ、落語をやっているのか、ちょっと見てみるか…そこでもへじはリモコンを動かす手を止めた。

  

◇◇◇◇◇◇

 

「そんでね、捕まりやしたのが鰻さんなんですよ。こうですね、がちっと両脇を岡っ引きに取り囲まれて腕を取られ、身動きも出来ねえ感じで、番屋に引きずって行かれやしたんですよ」

 

「なんだって、あの鰻がい・・・」

 

「そうなんでやすよ、あの鰻さんがなんですよ」

 

「そうかい、奴はなにかやるやつだと思っていたよあたしは。あいつは名前のようにぬっるっとしていて、なにか捉えどころがないじゃないか」

 

「ご隠居ょお、以前に風体や名前なんぞで人を判断しちゃあいけないっていつも仰っているのに、これがご隠居が言う、言動マッチポンプってやつですかあ?」

 

「それを言うなら言動不一致だよ。いや、いや、失礼した。あたしゃそんなつもりはなかったんだが、鰻がやっていた小料理店を止めてから酒ばかりあおって狂ったようになっていたってのを聞いていたし、まりこにもそのことで相談を受けていたから、ついまりこに肩入れして、まりこが不憫に思えちゃっていたのさ。だからつい鰻のことをそんな風に言ってしまったけど、それは本心じゃないよ」

 

◇◇◇◇◇◇

 

「まりこ」って名前はどこにでも落ちているからな。

 

それにしても「鰻」とは変わった名前の人もいるもんだ。

 

まあ奄美大島ってのは元(はじめ)とか、福(ふく)とか鰻「うなぎ」なんて漢字一文字の苗字も、そう多くはないが少なからず居るそうだから。なんて独り言ちて高倉を口にしつつ、もへじはそんなことを思った。

 

もへじはもへじなりに奄美大島のことを調べて観光に来ているみたいなのだ。

  

◇◇◇◇◇◇

 

「そうなんですかい?」

 

「ああ、あのまりこはな、一人で娘を産んで里子にも出さずにシングルマザーとして育て上げた健気な女(こ=子)なんじゃ。そして鰻と知り合い三人で家族として暮らしてきているんじゃ。まりこは鰻と籍を一緒にしたがっておるからな、こんな大捕り物騒ぎを起こしたと聞いて、あたしがまりこの気持ちを考えると、あの野郎はって思っちゃったわけなのさ。いや許しておくれよ。まりこは以前に、あたしんところで家政婦をちょっとの間していたこともあったんだよ」

 

「それで、鰻のやつはなんで捕まったんだい」

 

「それがですねえ、まりこさんが勤務するホテルニュー奄美に、ツアーで来ているとかってやつを一刀両断で切っちゃったらしいですよ」

 

「なんですかねえ、その男が東京から来て、まりこさん宅に訪問した後のことらしいんですよ」

 

「東京もんが、なんでこんな奄美大島の、まりこのことを知っているんだね」

 

「へえ、ご隠居。なんでもインターネットの付録ってやつらしいです。付録で何か記事が書けるらしいんで。その付録を通じて知り合って、わざわざ東京からツアーでやすがまりこさんを訪ねて来たらしいんですよ」

 

「ふ~む、インターネットでねえ。付録ねえ‥って、はち、そりゃあブログってやつじゃないかい。付録じゃなくてブログなら、日記でもなんでも思ったことを書いて世界に向けて公開するってやつなんだよ。あらぬことを書いて世界に公開して、炎上して後悔するなんて仕組みになっているもんなんだよ」

 

「へえ~、公開して後悔しながら航海する世界でやすか」

 

「はち、お前もたまにうまい事をことを言うねえ」

 

「しかし、なんで鰻は、まりこの刀でそいつを一刀両断しちまったんだい。第一あの刀はまりこしか使えないってしろもんで、奄美大島に伝わる三種の神器の一つだ。昔は褌のひもだけが切れて、今は時代に合わせてアンダーパンツだけを両断するという御神刀なのだよ。人なんか切れっこない!」

 

「しっ、ご隠居」

 

「なんだいはち、急にひそひそ声になったりして、あたし迄ひそひそ声になっちまうじゃないですか」

 

「いえねご隠居。なんでも鰻さんは、ある筋から狙われていて、いつも刑事二人が付きまとっているなんて噂わさがありやしたでしょう」

 

「ほうほう、そうだったねえ。鰻はなんだか東京の隠れ料亭みたいなところで料理長まで務めていたそうじゃないかい」

 

「そうなんでげすよ。鰻さんは大きな席の総料理長となっており、料理長として席に挨拶に行った折に別室で思わぬ大金の授受を見てしまったようなのです。それも私設秘書が三人もいる政治家です。1億円が入ったトランクが三つもあったそうでやす」

 

「それから数か月もしないうちに鰻さんはその料亭を首になり、なにがしかの金を持ってこの奄美大島に戻ってきて、小料理屋を始めてからのことはご隠居もご存じのとおりです」

 

「おおお、知っているもなにも、鰻はわしの貸店舗をまりこと共に借りに来たと聞いている。知らないわけがなかろう」

 

「へい、左様でがした」

 

「それででやすね、ご隠居。いま奄美大島に大きなリゾート開発の計画があり、その計画が着々と進められておりやすのはご存知ですよね」

 

「もちろん知っておるとも。なにやら奄美大島の大物フィクサーも絡んで・・・あっ、それか!」

 

「そのようなのです。裏で相当に汚い金が動いていて、その現場を見た鰻さんに危機の手が及んでいるらしいのですよ。それで鰻さんを守るための緊急避難として、都合よく東京から来た頭の黄色い男を殺害したことにし、緊急逮捕で身辺保護を優先させたってことらしいですよ。こっちも相当大きな力が動いているみたいです」

 

「おいはち、そんなに小声になっちゃあなにがなんだか分からないから、もう少し大きな声で、人に聞かれない程度にボリュームを上げて話して話しておくれよ。あたしゃ、もう耳だって遠いんだよ」 

  

◇◇◇◇◇◇

 

ふうん、これが今はやりの創作落語ってやつだな。案外面白いじゃないか。今いる奄美大島が舞台ってのが良いやね。

 

もへじは高倉をちびりちびりではあるが生のまま飲み続けている。ボトルに隙間が広がって来ていた。

 

東京から離れて色々なところに旅行すると、その場所その場所のローカルな番組が見られてこれも旅行の楽しみの一つだと、もへじはテレビの落語を楽しんでいる。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ご隠居ぉ、これぐらいじゃどうですか」

 

「おお、良いじゃないのかい。それぐらいの声で頼むよ」

 

「しかしだよ、鰻を、おとを連れて行かれてよくもまあ、あのまりこが、けつもでかければ気もえらくでかくて強いまりこがなあ、捕り物劇みたいなことを許したもんだねえ」

 

「それがねご隠居、まりこさんはなんでも東京から来た魁って人やsayocomって人から事情説明を受けて証人として保護するから、とりあえず芝居を打って話を合わせてくれって頼まれていたらしんでやすよ」

 

「ほうほう、まりこは知ってたか。良かったよ、あの女(こ)にゃこれ以上寂しい思いはさせられやしないんだから。気が強いだけで生きてきて、今の生活を必死に守っている。ホテルニュー奄美でも、進んで時給の高い夜シフトを選ぶような健気な女(こ)なんじゃよ」

 

「それでですねえご隠居、どうやら今夜奄美大島の大物フィクサーってやつの逮捕さ・・・ガガガガガギグゲゴ…」

 

◇◇◇◇◇◇

 

ぽんぽんと、テレビをはたくもへじ。

 

なんだ テレビの調子が悪いみたいじゃないか。まあいいやあ、少し酔ったし、風呂にでも入って明日に備えて寝るとしましょう。

 

ホテルのユニットバスに浸かるもへじ。

 

高倉を飲んで気分も良くなり、「♪奄美なあちぃかぁあしゃっ蘇鉄うのかあげえでえ~」と、だみ声で鼻歌がユニットバスから流れてくる。

 

ホテルニュー奄美は温泉じゃないからわざわざ大浴場へ行って、誰が入ったかもわからん沸かし湯になんぞに浸かるのは嫌なので、ならばと部屋のバスルームを利用することにしたのだった。

 

もへじがバスタブから出てくるとテレビが直ったのか映像が流れていた。それは緊急ニュースのようであった。

 

「先ほど警視庁の発表によりますと、奄美大島の大物フィクサーと言われる『当』という人物が、政界との癒着による贈賄容疑がほぼ固まったとのことで逮捕されました」

 

「とある料亭で調理人に贈賄の現場を見られてから、その調理人を殺害しようとした容疑もあり、証人を保護するために緊急逮捕となったようです。これにより当が係わっていた、奄美大島大型リゾート開発の話は立ち消えになるものと思われます」

  

へえ、奄美大島でも、こんなに海がきれいでのんびりして、観光ずれもしていない素敵な島でも、そんな大事件が起きるんだねえ…ふぁあ、酔った、寝る。

 

もへじはベッドに横になり、唇にバンドエイドを貼り、さらにマスクをして眠りに就いた。 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 翌日、奄美空港ロビー

 

「あの方です、奄美大型リゾート開発の現場責任者の武文さんです」

 

「ぼくは何も分かりません、一介のただの現場監督です。行けと言われればどこへでも行くだけです」

 

「今回は、リゾート開発が中止となったので秋田に帰ります」

 

「秋田の角館温泉花葉館で美味しいものを食べて、温泉に浸かって、今回事件に巻き込まれた気持ちを切り替えます」涼しげな顔の武文は、テレビの向こうで見ているだろう魁太朗とその仲間たちに向かってウィンクをし、颯爽と機上の人となるべく去って行った。

 

テレビの画面が切り替わった。

  

◇◇◇◇◇◇

 

奄美大島のとある豪邸

 

「こちら大物フィクサーの住居前です」

 

「大物フィクサーは、『殿』や『ご隠居』とか呼ばれていました」

 

「で、で、出て来ましたぁ!」

 

「出て来ました、多くの捜査員に囲まれて出て来ました」

 

奄美大島の諸悪の根源とも言われる大物フィクサーの『当』です」

 

「あ、当の両手には、布がかけられていますが、おそらく手錠をかけられているものと思われます」

 

「こ、腰にも紐がかけられ、捜査員が紐を握っています」

 

「遂に、昭和の最後の化け物フィクサーと言われた、ご隠居こと『当』が逮捕されました」

 

「昭和、平成、令和元年にして、ようやく昭和の悪しき一族の末裔が逮捕されたのです」

 

まりこの家

 

「おとー、やっぱりあの方なのか、おとーが東京の料亭で見たという大物は」

 

「そうだまり、あいつだ。あいつのせいで俺の人生は狂ったんだ。あの店もあいつの持ち物とは知らなんだ…」

 

「なんてことなの、ご隠居は、あたしの面倒をよく見て相談にも乗って貰っていたのよ。大金持ちだけど、いつもにこにこして優しくて気さくな方だったのよ。あたし家政婦やっていた時、お勤めしたこともあるからご縁があるのよ」

 

ガガガガガギグゲゴ…

 

「おとー、このテレビもうだめだあ。新しいテレ美でも買うとするかね。報奨金も出たことだしさ。パソ子もついでについでに新しくしたいな」

 

「おい、お前そんなに金を使って大丈夫なのか、おれは仕事もしてなくて、本当に申し訳なく思っているに…」

 

「なに言っている。おとー、家族だ。誰がなにじゃねえ、娘もおとーも、このけつのでっかいまりこも入れて皆で家族じゃねえの」

 

「でも、おとー、暇だからって浮気したら、この刀がおとーのパンツを切ればすぐバレるよ」

 

そうだな…と、二人の笑い声が響く・・・

 

◇◇◇◇◇◇

 

ホテルニュー奄美のとある一室

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「こ、この逮捕された『当』って、き、昨日の、テレビ落語のご隠居じゃねえか。それにあの武文って、ご隠居に確か、はちって呼ばれていたよな…なんなんだったんだ、あれは?」

 

まあ、いいやあ、昨晩は高倉を飲み過ぎたんだろう。

 

ピッとテレビを消す音がした。

 

今日はツアーでどこへ行くんだったかな?

 

ツベルクリンの機嫌が良きゃいいけどな。

 

俺が観光先ではしゃぐと、添乗員旗ポールふなっしー付きで、おれの頭をポコポコ叩きゃがるんだもの、おかげでづらがズレるズラってな。ははあは…朝から決まったな。さあ行くか。

 

余禄2:

さあ、今度こそはあなたの番です。

 

って思いましたけど、なんだか、これで最終回でってことに出来ちゃいそうですので、とりあえずこれで最終回ってことにしたいと思います (´▽`;;;)

 

奄美大島刃傷殺人事件簿】に勝手にID召喚してしまいました皆様、大変申し訳ありませんでした。おかげでしばらくは楽しい夢を見させていただくことが出来ましたことをお礼申し上げます。

 

最初に話を続けてくださったアメリッシュさんに、さらに話を膨らませていただき紹介動画まで作っていただいた魁太朗さんのお二方に深く感謝しお礼を申し上げます。

 

それに加えましてほおずきれいこさんには度々記事を書いていただき、ブロガー連携小説的なことをうんと楽しませていただくことが出来ました。個人的にも特に深く感謝の意を表したいと思います。

 

皆様どうもありがとうございました。

 

もへじ*1は永遠に不潔です。

 

それでは【奄美大島刃傷殺人事件簿】はこれにて終劇といたします。

 

 



 

ブログで小説を書く事でこんな記事を書きました。 

 

i-shizukichi.hatenablog.com

 

それで、言い出しっぺが旅行が控えているとかなんとか言い訳をしていてはだめだと思い、奄美大島刃傷殺人事件簿を 1記事に纏めてみました。

 

そしてこの記事をブログの冒頭に表示する設定にしました。

 

この試みを皆さん如何思われるでしょうか、ご意見を[コメント]や[ぶコメ]でいただくと嬉しく思います。ごめんなさい[コメント]への返信は致しませんので自由に書いてください。

 

なお改めて【奄美大島刃傷殺人事件簿】に皆さまがご協力いただいたことを深く感謝したいと思います。ありがとうございました。

 

寄稿していただいて目次とした項目に切後者の名称に「さん」付けをしておりません失礼をお詫びします。これは目次を見やすくする意図で他意はありません。

 

寄稿者のブログで記事を拝見したい方はこちらのリンクからどうぞ。

 

ブロガー連携妄想小説【奄美大島刃傷殺人事件簿】遂に完結!

 

もへじ

 

◇◇◇◇◇

 

 

そういえば【奄美大島刃傷殺人事件簿】番外編もあるんだよね。それも収録しなければ…で、収録しました。

 

奄美大島刃傷殺人事件簿・番外編

珍小説か?謎のIDコール事件 もへじ 2019年7月6日

 

それは一通のIDコールから始まった。

 

 

hoozukireikoさんからテスト送信IDコールがありました

 

 

 

おっ、 Hatena Blog で手のきれいな愛しの君からのIDコールを受けて、お調子者のもへじはいそいそとほおずきれいこのブログへ飛んだ。もへじは奄美大島刃傷殺人事件簿にほおずきれいこの出演をお願いもしてあった。

 :

「えっ、なんだい。どこにもおいらのIDなんか書いてないじゃないか?」

鬼灯を持って遊ぶ、化け狐風なものに騙された感を持ったもへじであった。

 

 「おや、下の方に何か書いてあるぞ、なになに…」

 

テスト送信


今日は午後から仕事でした。

id:i-shizukichi

 

 

 

 

 

今日午後1時八王子ドン・キホーテの前で待つ。

テスト送信です。

Add Star

 

「えっ、『テスト送信』?」

マウスで何やら操作していてもへじは独り言ちた。

「そうか、分かったぞ。へへ、これはおいらに向けたデートの待ち合わせ約束メッセージだな」

もへじはうれしそうな顔をして、モニタに向かってにやついていた。

 

「明日は、憧れのほおずきれいことデートかあ…」

 

「よし、了解のスターをポチっとな」

 

Add Stari-shizukichi

 

そして今日、もへじの金髪はいつもよりも心なしか明るく光り輝いていた。ほおずきれいこが指示した約束の待ち合わせ時間は午後の1時だというのに、朝の7時からいろいろとお洒落を決め込んでいる。

「ふ、ふふ~ん」と鼻歌も出て、気分も高揚しているようだ。

PCを起動して再度ほおずきれいこのブログへ訪問する。

「おっ、小説も書いたのかあ」

もへじは記事内リンクでその小説も読みに飛んだ。

「お、『遺伝子検定』とな…」

「ふん、ふん、ふふんがふん」

「そうか、遺伝子検定ねえ。遺伝子でイケメン度合いが分かる時代なのか。確かに整形すればイケメンなんて誰でもなれるけど、おいらなんか元から可愛いから整形する必要もない。しかしながら、さすがに、経年により遺伝子劣化で遺伝子のイケメン認定は貰えないだろうなあ」

「なんたって高齢者からナンパされるほおずきれいこの、その高齢者ナンパ年齢の引き上げをしちゃうかもっておいらなんだから。って、すると、ほおずきれいこは爺好きなのかもな、うっしししっ♪」

「イケメン認定の次の『セックス検定』ならこのおれ様にまかせておけってもんだからな、わっはっは。ちょいとそこにお布団敷いておくんなましってなもんだわいな」

などと現実離れした妄想と錯綜の世界を彷徨い出すもへじであったが、そこは亀の甲より年の功でかろうじて現実世界に踏み留まり、やおら朝食の支度を始めた。

今朝の朝食は、納豆全粒粉マフィンサンドイッチとホットミルクのようだ。なんだかここのところ二三日は朝食に納豆全粒粉マフィンサンドイッチを食べている。

 

よほど気に入っただけでなく、手軽に作れるのもいいのだろう。嫁に逃げられた男というのは、滑稽でもあり哀れでもある。

もへじは納豆全粒粉マフィンサンドイッチをぺろりと食べても物足りなさそうにして、冷蔵庫からバナナを一本取りだして食べだした。

 

バナナを食べながら Hatena Blog で更新ブログを訪問しているようだ。

「これだ!」もへじが叫んだ。

「ほおずきれいこは手がきれいな人が好きな手フェチなんだ。この You Tube の動画をスマホで見せれば、いちころで改めておれに惚れ直すだろうぜ、へへへ」

 

tanukitikun-x.hatenablog.com

www.youtube.com

 

 

「美しき繊細な手から繰り広げられる指先の軽快さ、心地よい音と振動とハンマーが弦を打つアクションの何とも言えぬタイミング刺激が猫にもたまらないんだから、手フェチのほおずきれいこならこの指先の動きを見れば一発で落ちるはずだ。そしてもへじさぁあぁあぁあぁあんってなるのだ」

今日午後1時。

ドン・キホーテ前。

ひとりの男がドン・キホーテの入り口付近で、あっちへうろうろこっちへうろうろとしていた。

 

金髪眼鏡で小太り短足。いかにもの不審人物な感じだ。あれじゃそのうち通報されるのと違うかと思うほどだ。

 

その様子を道路向かいにある『情熱のすためしどんどん 八王子店』の通路側の席で、すた丼をきれいな手で支え掻っ込んで食べているアラフォーと思われる美しくもすきっと男っぽい雰囲気もある女が、鳶が獲物を狙うがごとき目でドン・キホーテの前でうろうろしている男を窺うように見ていた。

ややあって、女はすた丼の飯粒を飛ばしながら「ちっ」と低く舌打ちした。

 

女はすた丼店を出ると、近くに停めてあった古びたチャイルド補助席の付いた電動ママチャリに乗って颯爽と漕ぎだした。

 

その姿を見ていた周りの高齢者共がわらわらと駆け寄り付きそうになるのを、さらさらと交わし去っていた。

夕方5時。

 

一人の男がドン・キホーテの前にある石のモニュメントに腰を下ろしていた。うな垂れ肩をおとした疲れた感のある男の尻を石の冷たさが冷やす。

そこに通りかかったアメリッシュ

「あら、もへじさん、こんなところで何しているの、けつけつが冷えるわよ」

 

「うへ~ん、ほおずきれいこに呼び出されたのに、4時間以上待ったのに来ないんだよう」ともへじがすがるようにアメリッシュに答える。

 

「どういうことなの?」アメリッシュが聞く。

 

もへじはスマホを見せて「ああでこうだあだからこうなってこうしてこうなったんだ」ってアメリッシュに言う。

 

「ああだからこうしてこうなってこうしているわけね」とアメリッシュも呪文のように呟いて答える。

お互いにこれで意味が通じているのか?

「なるほどね、最初は白文字をマウスでドラッグしてみたらこんな風になっていたのね。わくわくしちゃうね。あたし絶対もへじさんの味方だから応援する」

今日は午後から仕事でした。

id:i-shizukichi

 

 

 

 

 

今日午後1時八王子ドン・キホーテの前で待つ。

テスト送信です。

「うへ~ん、ほおずきれいこが良いよう」

「ったく、バカ男!」

今日は午後から仕事でした。

 

 

 

 

 

 

テスト送信です。

「今は、その白地の文字列はどこにもないわね。修正したんだわ」

「もへじさんかわいそうだけど、これ、もへじさんがどんな人か様子見で呼び出されたんだと思から…」

 

「じゃあ、なんでほおずきれいこは出てこないんだ?」

 

「ごめんねもへじさん。あたしがあやまることじゃないけど、もへじさんがほおずきれいこさんの眼鏡にかなわなかったってことで、出て行くまでもないってことだと思うわ」

 

「びえぇぇぇぇぇぇん (/ДT)」

 

「泣かないの、デカプリオでハリソンフォードで、あと…なんかなんでしょう、自称主人公が泣いちゃだめですわ。それじゃあアメリッシュが泣かせているみたいじゃないですか」

 

「ひっく、ひっく、わ、分かった」

 

「おりこうさんです。じゃ、そこのカレー屋さんシャンティで、もへじさんの好きなマトンカレーをおごってあげるから」

 

「は~い (´▽`)♪」 

i-shizukichi.hatenablog.com

 

    


余禄1:

お話はフィクションでございます。

くれぐれも創作と現実との混同なきようお願いします。バーチャルであってリアリティはゼロです。 

IDコール召喚させました方様、お忙しいところ申し訳ありません。強制ご出演に感謝いたします。

 

 

スペースファンタジア・宇宙の果てで愛を叫ぶ! もへじ 2019年7月17日

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画像はphoto ACさんの無料画像

 

・・・・

広大な宇宙

時間のない世界

メビウスの輪のように

遥か未来であってそれは遠い昔

一隻の宇宙船ノア号に変異が起き

消えゆく物語が始まる

 

◇◇◇◇◇◇

  

ぷしゅ~~~っと船内に排気音のような音が響く。

 

ウィーンとフロントカバーが持ち上がるとともに、白い重たい空気がコールドスリーピングカプセルから溢れ零れ床に広がっていく。

 

「う、なんだ。着いたのか?」コールドスリーピングカプセルから上半身を起こそうとしながらその男はそう呟いた。

 

目を開け起き上がろうとする男の顔の間近で覗き込む一体の顔があった。

 

「ポジポジ子か、着いたのか?」

 

<いいえ、まだ着いてない>と、ポジポジ子と呼ばれた物体が答えた。

 

「なんだって、じゃあ、なぜ起こしたんだ」コールドスリーピングカプセルから身を起こしながら男は不機嫌に問い詰めるようにポジポジ子を見つめながら言った。

 

<ストライクが、探査カプセルでノア号を、離脱しました>

 

「なんだって、じゃあ、近くに居住可能な惑星でも見つかったのか?」と男がポジポジ子に聞いた。

 

<はい。その惑星の探査にストライクは行った>

 

「それならば、なんの問題もない」この船のシステムは自動で惑星探査システムが働くようになっている。

 

そんなことはシップ・アテンダント・アンドロイドのポジ子にもプログラミングされ、理解しているはずだ。「それなのに、なんで目覚めさせたのだ」と男が詰問調でポジ子に問い詰める。

 

<もへじ艦長。ポジ子、ストライクが行って寂しい>アテンダント・アンドロイドことドロイドにそんな感情があるとはと、船長と呼ばれた男は訝んだ。

 

<ストライク、もう120時間帰ってこない>とポジ子が続ける。

 

「なんだって?」探査カプセルで4日以上帰還もせずに調査に出たままというのはおかしい。

 

いかにどんな環境にでも耐える探査アンドロイドであっても48時間に一度は帰還する決まりだ。帰還しないまでもその場合は何らかの報告を入れるはずだ。その報告もないのか。

 

<ポジポジ子、ストライクがいなく寂しい>

 

アンドロイドのくせに何が寂しいだ。そんなことはあろうはずもないのに、このドロイドはなにかシステムに欠陥があるのだろうか。

 

<ポジポジ子、ストライク好き>

 

「えっ!」どういうことだ、と言わんばかりにもへじ艦長はポジ子に顔を向ける。

 

<ポジポジ子、ストライクが好き>ドロイドはもう一度言った。

 

「ポジ子はおれも好きだろう」と艦長。

 

<ポジポジ子、艦長好き。でもストライクもっと好き、愛して、い、る>

 

「おいおい、勘弁してくれよ。おれはもっと寝ていい夢を見ていたかったんだぜ」

 

◇◇◇◇◇◇

 

そうかドロイドのストライクは恒星HENO13-KUSAIYOの第3惑星であるHOTTAIMOSWANDENE星を発見し探査に行ったのか。確かにこの星の環境であれば移住も可能だし探査するに値する惑星であるな。少々小さい惑星であるからその点が問題ではあるな。

 

我らが地球と呼ぶ惑星は、太陽が超新星となった時に太陽に吸収されて消えてしまったが、その地球と似た環境である。

 

ノア号は宇宙暦2019年7月17日に永住可能な惑星を求めて宇宙に出ている。

 

光速状態でワームホールワープを繰り返しているために宇宙に出てまだ1日も経っていないが、地球的暦では既に40億年が経過している。太陽は赤色矮星となって膨張し地球も飲み込んでしまっていることだろう。この後、太陽が燃え尽きるには数億年の時が必要になるのだろう。

 

宇宙では時間はあってないに等しい。

 

天体から数十億年前の過去の光が届くように、我がノア号も40億年前の光の残像にしか過ぎないのだ。だが我らノア号の乗員乗組員は現実として生きているのだ。私以外はコールドスリーピング状態だがな。

 

宇宙に出て40億年が経過していると頭では理解できても、それは実際には昨日のことなのだから、理解していても理解できることじゃない。まるでメビウスの輪のように一部が反転して閉じている世界だ。

 

地球と似た環境であれば当然にノア号としては永住可能かどうかの調査対象となる。

 

それでドロイドのストライクが調査に出て帰艦していないとは、アクシデントに遭遇したと考えるしかないだろう。

 

これは調査の必要があるなともへじ艦長は考えた。

 

他の乗務員を起こすには忍びないだろう、おれが調査に行くしかない。ノア号の艦長様自らがストライクを捜しに行くのだ、ありがたく思えよドロイド野郎。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ポジポジ子、ストライクを連れて帰るぞ。だから他の者のコールドスリーピングを解除するなよ。良い夢の続きを見させてやっていてくれ。分かったな」

 

<もへじ艦長、ポジポジ子嬉しい。ストライクを連れてきて>

 

「ああ、絶対に連れ帰る。アクシデントがあっても自己修復機能のドロイドだ。本体には損傷はないが、何かの理由で帰還できないのだろう。それを探りにHOTTAIMOSWANDENE星に行ってくる」

 

<もへじ艦長はどうでもいい。私のストライク連れて来て>

 

「おいおい、ご挨拶だな。でも、任せておけ」艦長はハリソンフォード張りのしたり顔で片唇を上げ、ドロイドのポジポジ子に向かってウインクをして見せた。

 

宇宙船(ふね)の窓に映ったその顔を見て、似合わないことこの上なしだな、相手がドロイドで良かったともへじ艦長は思った。

 

「だけど、ポジポジ子。他のコールドスリーピング者たちを復活させるなよ。特にオババとアメリッシュは絶対に冬眠から目覚めさせるんじゃねえぞ」あの二人が復活してみろ、ああだこうだとオババに主導権を取られてしまうわ。

 

それにアメリッシュも『難度ディズニーシーのジーニー』ってぐらいに高度な人間関係を解き明かす異才をもっているから、オババとアイリッシュで組まれてしまってはおれでは歯が立たねえ。いや、どちら一人でも強敵過ぎるってもんだ。永遠に眠っていて欲しいとさえ心底そう思う。

 

「この宇宙船(ふね)で平穏のままストライクと再会するには、絶対に奴らを融かすんじゃねえぞ」そう、きつくドロイドのポジポジ子に命令した。人差し指でこの指令を遵守しろよ、いいな。というようなしぐさをポジポジ子にしつつ、もへじ艦長は探査カプセルに乗り込んだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「きゃ、はは、そうなの、だからあんたはいつもダメなのよ。私の妹のくせにさ、ねえアメリッシュ」とオババが妹の顔を舐めるように見つつ、視線をアメリッシュに移す。

 

「オババ様、叔母様も良くやっていらしゃったと思いますわ。優ちゃんをあんなに純真無垢なままに箱入りのお嬢に育て上げたのですから、そんなに言わなくても良いと思いますけど…」

 

「だまらっしゃいアメリッシュ。猫かわいがりで優ちゃんはもう行かず後家ですよ。そんな優ちゃんを太朗君が貰ってくれるって言うのに、妹ったらいつまで自分の娘を愛玩動物のままにしようとして結婚を邪魔するなんて、娘の人生の私物化が許されるわけがありません。妹が毒親なんてオババは姉として情けないのよ」

 

「あの人は、私と一緒になっても姉さんばかり見ていたのよ。私は、一人娘の優ちゃんを、支えにするしかないじゃないの。いつも優等生だった姉さんからあの人を奪ってやったのよ。それなのに、それなのに、なに、この心の虚ろ、キィーッ…」とスターウォーズヨーダのような顔をして喚いている。

 

「はい、はい、ここはもう地球じゃないのよ。地球はもうとっくに消滅しちゃっているわ」とツベルクリンが、なぜか旗の付いた小さなポールの先端にふなっしー人形を付けたものでアメリッシュのオババと叔母の間に割って入る。「兄弟姉妹、じゃなくて人類仲よくよ」

 

「はい、じゃあ今から昼食会場に移動します。次の集合時間は00分です」ツベルクリンはざわざわと騒ぐ人たちを先導して誘導する。

 

「今日の昼は仙台ラーメンの喜多郎辛味噌ラーメンですよね。うっひ♪」と言いながらオイチは通信末端で宇宙ポケモンをやりながら付いてくる。

 

◇◇◇◇◇◇

 

魁太朗はなぜ我々がコールドスリーピングカプセルから出されたのかを、昼食会場に向かいながら考えていた。

  

もへじ艦長がドロイドのストライクがHOTTAIMOSWANDENE星へ調査に行ったまま帰還しないので事故と認定し探査に向かったのは分かるが、なぜ我々までコールドスリープから起こされたのだろうか。はて、これはもへじ艦長の指示だったのだろうか。

 

この件は後で『難度ディズニーシーのジーニーことアメリッシュ』と相談してみる必要があると思える喫緊の課題だ。しかし、なぜか、自分だけが現況が理解できていない。そんな感じだ。

 

とりあえずはまず喜多郎辛味噌ラーメンを食べるとするか。とに、考えは落ち着いた。たった一日とはいえ、地球時間にしたら40億年眠っていたのだ。気分的に腹が空いた。

 

それにしても思うのは、あの緑豊かな地球はもう太陽に取り込まれて燃え尽き石くれと化してしまったのだろう。そして消えゆく秋田県どころじゃなくて、地球そのものが消えてしまったことだ。新たなビッグバンが起こらない限り太陽系も永遠に凍り付く死の星系となるだろう。

 

辛味噌ラーメンをすすりながら魁太朗は「そうだ思い出した、ドロイドの創世記案件についてだ」それでポジポジ子に起こされたのだ。なにがなんだかで一瞬とはいえ、起こされてから少しの間の記憶が消されているみたいだ。

 

これが、コールドスリープ酔いというやつか。

 

ふっ、秋田県も消えるどころか地球まで消えてしまい、おれの記憶も一時消えてしまったとは、たいそうに皮肉なもんだな。

 

◇◇◇◇◇◇

 

sayocom は昼食会場に向かいながら小林さんがどこかにいないかと目で追っていた。ノアで地球を飛び立つときに、確かに小林さんも搭乗したはずなのは確認している。それなのに小林さんがいない。小林さんは一般乗客としてコールドスリーピングカプセルにいるのだろうと思うことにした。いや、事実その通りだった。

 

しかし sayocom 某国の特命を受けてノアに乗船していたのではあったが、その某国も宇宙時間僅か一日で40億年が過ぎ去ってしまっては、某国も何もあったものではなく亡国となってしまっているので、sayocom としてはノア号内での様子を見守るよりほかに手立てがなかった。

 

某国が亡国となって目的を失ったとことで sayocom は裏社会から解放されたのだ。今度こそは小林さんと、今ひとたびの愛ある生活に戻れる幸福感を味わいたいと思っていた。

 

オイチおすすめのこの美味しい辛味噌ラーメンのこの味を、sayocom は何としても小林さんに伝えたかった。そういった極平凡な生活が戻ることが sayocom 望みだった。そしてもう一つの新たな使命として、sayocom はこの創世記プロジェクトのことを思った。、

 

◇◇◇◇◇◇

 

え子はそんな人たちの様子を観察しながら、オイチ推薦の「辛味噌ラーメン」を味わって食べていた。

 

え子には味がやや薄目だったようで、え子は地球から唯一持ち込んできた私物のヒマラヤピンク岩塩ミル付でゴリゴリミルを回し辛味噌ラーメンに少しだけ入れていた。地球が消滅したこの世界では、その地球のヒマラヤピンク岩塩が、ダイヤモンド以上に貴重なものとなっていることもまだ知らずにいた。

 

辛味噌ラーメンにヒマラヤピンク岩塩が入ることにより、味が引き立ってより美味しく感じられた。このいまの生活を、え子はえ子は幸せだと思った。

 

え子はこの宇宙船(ふね)の心理カウンセラーとして乗船していた。

 

理不尽かつ不本意なことから子連れホームレスとなって世界を流転した数奇な人生を送らされてしまったえ子だからこそ、人の心の痛みに寄り添って適切なアドバイスが出来る心理診療カウンセラーが適任なのだ。それ故に特待乗船となっているのだ。ドロイドに自我が目覚めるかの実験も行っていた。

 

◇◇◇◇◇◇ 

 

はぐれいぬは意味が分からなかった。

 

自分は奄美大島に行っていたはずだ。

 

それも奄美大島で山菜のアマミオオタニワタリを求めて山に入って、そうだサングラスにマスクをした不思議な女に出会った。女は確かほおずきれいこと名乗った。

 

探していたアマミオオタニワタリが入ったカゴの覆いを払う時のしぐさが印象に残っている。そしてあなたに頼みたいことがあると言われて、それから気が付いたらこんな宇宙船(ふね)の中にいた。

 

ほおずきれいこが言うには、いまから40億年後に太陽が赤色矮星となって膨張し地球を飲み込み地球は消滅してしまうとか、およそまともじゃないことを聞かされているうちに、出してくれたジュースを飲んだ後の記憶がないのだ。ほおずきれいことは何者だったのだ。

 

それにしてもあの時のあれはおれだったのか。じゃあ今のおれは誰なんだ。40億年てなんなんだ。毎日一円貯金してたら40億円という一生使っても使い切れないほどの大金になっちゃう年数が、つい昨日だったのってありえないだろう。

 

奄美大島で山菜取りに入ったおれは誰だ!

 

ほおずきれいこと名乗ったサングラスのあの女は、なにが目的だったんだ。ほおずきれいこって、本当の名前かどうかも分からない。

 

今の俺が俺であるなら、あの事は遠い先祖の記憶なのかもしれない。はぐれいぬにはそう考えるしかこのギャップを埋める手立てがなかった。それにしても40億年後でもこの辛味噌ラーメンって美味いなあって思った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

食事会場にはほのぼのとした絵日記が貼り付けられていた。コールドスリーピングから目覚めて書いたものらしい。書いたのはDr.トマレである。

 

絵日記を書いていたDr.トマレを見たツベルクリンはその絵日記が宇宙船(ふね)の雰囲気を和らげると思い、Dr.トマレにお願いして彼女の画を食堂に貼らせてもらったのだった。

 

ついでに自分で書いた可愛らしい絵もペタペタとしっかりと貼り付けていた。

 

ツベルクリンには意外に画才があるようなのは新しい発見だった。その絵は物語風で40億年昔の日本の神話的な内容であった。それこそがこの宇宙船(ふね)の二体のドロイドの辿る創世記プロジェクト物語ともなるのだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

誰があいつを目覚めさせたのだという顔を全員がした。

 

ハイテンションである。

 

広いと言っても閉鎖的空間の中の広さの世界である。一人の男がハイテンション気味に何かを盛り上げている。暑苦しくて仕方がない。

 

ナオキ・ニシガキである。

 

「ちゃあ、この辛味噌ラーメンはうまいっすねえ。オイチさん。べ子さん、まままっこりさんどうすか?」

 

「べ子さん、そのチャーシュー食べないなら下さいよ!」

 

「ダメ! 最後に食べるために残してるのよ。あんたなんかに家族にブログ止めされられたべ子のこの気持ち、なにが分かるのよ。このチャーシューに私の総てがかかっているの。私はべ子よ」

 

「ういっす、てなことを言われても、なにがなんだかニシガキには分かりません。じゃあ、スープが余ったらでいいす。オッス!」

 

「あっ、まままっこり先輩、そのチャーシューおれが食べてあげます。それ以上肉を食べるとけつがもっと大きくなって、けつけつ星人になっちゃいますよ。けつけつ星人は、ガンツの玄野計に退治されちゃいますですよ~!」

 

「しゅぱっ」

 

「おっとと、何やったんすかぁ、まままっこり先輩っ!」

 

「そんな、チャーシュー一枚ぐらいで居合切りみたいな真似しなくてもいいんじゃないすか。おいら怖いんでちびりそうになったんでオシッコに行って来るっす!」

 

「きゃあ、パンツが半分に切れているすっ!」とトイレで素っ頓狂な声を出すナオキ・ニシガキ。

 

その声を聞いて「ふっ、またつままらないものを斬ってしまった。ん、刀が臭い?」とつぶやくまままっこりは神妙な顔をする。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ぷしゅーっ

 

与圧室が減圧されてもへじ船長がドロイドのストライクを連れて帰艦した。

 

<ストライク♡!>

 

ストライクに駆け寄るポジポジ子。

 

まるで1日留守番をさせられていた猫が、主人が帰ってきて嬉しくてたまらなくて、主人にまといついて寂しかったことと訴え、なおかつ帰ってきて来てくれた嬉しさを持てる愛を全てぶつけ表現しているかのようだ。

 

まんざらでもない顔をするドロイドのストライクはポジポジ子を抱きしめる。

 

ポーっとしているかのようなドロイドのポジポジ子。これが愛だとその場にいる誰もが認識させられた。ドロイド創世記プログラムはここに実ったのだ。ただ一人を除いてだが。

 

「これは、これは、一体どうしたことだ」と、ぼっとしているポジポジ子に向かって詰問調に問いかけるもへじ艦長。

 

問いにポジポジ子が答えた。<もへじ艦長ではストライクが心配。だから、相談するために、皆に起きてもらいました>

 

「そうよ、ポジポジ子はもへじ艦長がストライクの救援に向かったけど、金髪頭じゃ心配だからって起きたばかりの私に、目から鼻水をこぼさんばかりに訴えるのよ。頼りない艦長が悪いんだわ」とアメリッシュが言う。

 

「だからって、ア、アメリッシュを起こすのかよ。あれほど言ったのにポジポジ子のやつ」と、アメリッシュに聞こえないくらい小さな声でもへじ艦長は言った。

 

その声を地獄耳のオババがとらえる。

 

「だまらっしゃいもへじ艦長殿!」

 

「ポジポジ子がストライクを思う気持ちを慮れば、私たちをコールドスリープから起こすその心根が分かりませぬか。おぬしい、女心を何と心得おる。愛のためならたとえ、どぶのなかでも前のめりに愛したい女心がうぬには分からぬのか」と低く良く伝わる声でオババが吠えるように叫び言う。

 

「ポジポジ子は、いやもうポジポジ子さんは人としての気持ち、愛が芽生えてしまっているのです。人造人間のドロイドではありませんよ。その証がもへじ艦長を先に起こし、金髪頭ではやはり心もとないとその後我々を目覚めさせるという人間味ある行動を取らせたのです。彼女はこの創世記プロジェクトテストをクリアしたのです」とツベルクリンが言葉を継ぐ。

 

「ええ、それじゃドロイドが血の通った人間と同じだって言うのかい。だたの人造人間じゃないか、人の手によって作られた宇宙船(ふね)のアテンダント・ロボットに過ぎないんだぞ」

 

「まあ、もへじさん、なんてひどいことを言うの」とアメリッシュが続く「ポジポジ子は人造人間でも何かを愛するという心が芽生えたのよ。もうロボットなんかじゃないわ、ポジポジ子はもう一人の人間なのよ。そう、もう愛に生きるポジポジ子さんなのよ」

 

「へえ、そうですか。ドロイドが人間なんですか。それじゃあドロイドが赤ちゃんも産めるって言うのかいよ~」ともへじ艦長は毒づく。

 

「もへじ艦長さんご存じないのは当然です」と sayocom が、さらに「宇宙船の人類に我々に何かあった時に人類が絶えることがないようにと、人間よりもタフなドロイドへDr.トマレの手によってSTAP細胞から作った生殖器をポジポジ子とストライクさんにも移植してあるのです。それがドロイド創世記計画だったのです」ともへじ艦長に向かって話す。

 

「って、いったい何を言っているのだ。艦長のおれだけがなにも知らないってどういう事なんだい」あたふたするもへじ艦長。自分だけがなにも知らされていないって、そんなにおれは信憑性がないのかと普通なら落ち込むのに、何やら笑顔で痴呆のような表情をしている。さすが日頃夜中に徘徊散歩していただけのことがあって、痴呆の様が板についていた。

 

「それはねですよぉ、人造人間であるドロイドはもともとSTAP細胞から人間と同じに作られているのよぉ。ただ違うのは繁殖器官がないだけよぉ。それを私がポジポジ子さんとストライクさんのSTAP細胞からそれぞれに作ったのですよぉ。ですが、STAP細胞には問題がありましたのよぉ。私はSTAP細胞培養時に鼻くそを少し入れることでその問題は解決できましたのよぉ。それともう一つ人間として肝心なのは心よぉ。心は作ることはできないのよぉ…だからこそのこれが創世記プロジェクトだったのですよぉ」とDr.トマレは言った。

 

「卵巣はポジポジ子の細胞から遺伝子工学でDr.トマレ先生がSTAP細胞から発生させることに成功し、さらに精巣も同じくストライクの細胞を利用してSTAPで発生させることに成功したんだ」まままっこりがしたり顔でけつを揺らし、「月のものもあるし、こいつは朝立ちしてたりするんだぜぇ」と、居合刀をにぎにぎしながら言った。

 

「つまりね、ドロイドであるポジポジ子もストライクももう人としての機能は十分に備えているってわけなの。お分かりですか、私の名前をアイリッシュとよく間違えるもへじ艦長様よりうんと人間的ですわ」と、皮肉気味にアメリッシュが言う。

 

「ひゃはあ、凄いっす」ナオキ・ニシガキが吠える。

 

「じゃあ、なんでこんな猿芝居をおれに仕掛けたんだ」ともへじ艦長。

 

「そういえばドロイドのストライクの野郎は、HOTTAIMOSWANDENE星の見晴らしのよい高台に住居みたいな建築物を建てていたが、あれはどういうことだ。てっきり更なる調査用の基地と思っていたのだが…まさか、あれはエデンのつもりか?」

 

辛味噌ラーメンもう一杯食っていいすか?」とオイチが通信末端で宇宙ピカチュウの何かレア個体を掴まえて、うれしそうな顔をしながらツベルクリンに尋ねた。

 

「それはオプションになるわね、お金を払ってくれるならいいわ」と、嬉しそうにツベルクリンが答える。

 

「ぼくも、いいですか。植物育成ルームで育てているアマミオオタニワタリの葉なら辛味噌ラーメンに合うと思うので入れてみたいんです」とはぐれいぬが続いた。

 

「いいわよ、いらっしゃい」とツベルクリンはうれしそうに彼らを連れて行った。自分はソフトクリームを食べるつもりなのだろう。そのソフトクリームはツベルクリンにだけ、なぜか無料なのだ。

 

sayocom がもへじ艦長に向かって説明する。

 

「もへじ艦長これはですね、STAP細胞から作られた臓器を移植して人間と同じ機能を持たせたけど、自己を認識する心は機械的に持たせることはできないのです。だからドロイドには自我が芽生える必要があったのです。幸いにストライク、いやもうストライクさんと呼びますが、ストライクさんには先に自我が芽生えていたので、二人の移住可能な惑星が見つかり次第、ストライクさんは移住探査計画を実行したのです」

 

「ですが、ストライクさんがいかにポジポジ子さんにアタックしてもポジポジ子さんには自我が芽生えてこなかったのです。いえ、自我が芽生える兆しはあったのです。それで我々はストライクさんをポジポジ子から切り離してショックを与えると共に、なおかつ移住可能な惑星探査に向かわせるように仕組んであったのです」

 

「ストライクさんと切り離されたポジポジ子さんがどのような行動をとるのかも、それすら緻密に計算されていました。そしてこれらは全て宇宙船(ふね)コマンダーシステムの人工知能『HUYU』への事前にプログラミングがなされていたものなのです。私たちが冬眠するほんの少しの前にです」

 

と、sayocom はもへじ艦長に説得力のある低い声で告げる

 

「そこからはぼくが説明しよう」と魁太朗はコールドスリープ一時的健忘症からすっかり立ち直っていた。

 

「艦長が一番最初に冬眠に着きました。それから私たちはドロイド創世記プロジェクトを実行に移すことにしたのです。なんたって時間は40億年あります。瞬きさえもする時間ほども必要ないくらいの実時間で人としてならたっぷりの無限時間があるのです。瞬きをする間に世代交代してしまう時間ですらありますから、瞬きをしている間まで時間を使ってしまうと我々が死んでしまいますから、そこは研究に必要な数年分をそれこそ目にも止まらぬ早業で使いました」

 

逆に目をぱちくりさせ口をぽかんと開けるもへじ艦長をお構いなしに、魁太朗が続ける。

 

「ですから艦長いやもへじさん、これはすべて計画通りに行ったのですよ。そしてポジポジ子はストライクが傍にいなくなって100時間後に自我が目覚め、ストライクがいないことでストライクさんが好きなことに気が付いたポジポジ子は、20時間考えて頼りになる、いいですかもへじさん頼りになるですよ。頼りになるもへじ艦長をコールドスリープから起こしたわけなのですよ。これが自我を誘発するために必要だったのです。起こされたのが艦長でなかったら、この計画はなかったことにされる予定でした」

 

「う、うむ・・・」ごくりとつばを飲み込むもへじ艦長。心なしか金髪がケバ立っている。

 

◇◇◇◇◇◇

 

恒星HENO13-KUSAIYOの第三惑星であるHOTTAIMOSWANDENE星では、ポジポジ子とストライクの二人が愛し合っていた。

 

ポジポジ子はSTAP細胞の記憶の中に以前にストライクという男と付き合っていたような気がしないでもなかったが、今のストライクはその時のストライクなのかどうか分からない。しかしそんなことはどうでも良い事だった。いまのストライク、この人ならになら、心から信頼を寄せられると思った。そして、お互いに愛おしいと。

 

ポジポジ子とストライクはHOTTAIMOSWANDENE星のアダムとイブになった。星々は産めよ殖やせよ地に満ちよと二人を祝福した。二人の生活の地にはアマミオオタニワタリの苗が植えられていた・・・

 

◇◇◇◇◇◇

  

外宇宙世界で物語が始まる

恒星HENO13-KUSAIYO第三惑星

遠い昔であってそれは遥か未来

メビウスの輪のように

時間のない世界

広大な宇宙

・・・・

  

◇◇◇◇◇◇

 

宇宙船ノア号は乗員全てがコールドスリーピングカプセルで良きかなの夢にまどろんでいる。宇宙船ノア号はマザーコンピューターHUYUが全てを管理下に置いていた。

 

遥かなる移住可能な惑星を求め、ドロイド創世記プロジェクトからさらに数百年が経っていた。

 

宇宙船ノア号の艦内は誰一人として動く者のいない静寂であった。

 

その時、数百年の時を経て宇宙船のマザーコンピューターがHUYUがけたたましくアラートを発し、強制的にすべてのコールドスリーピングを解除した。

 

目蓋をこすりながら宇宙船外をのぞき込む乗員たちの目に、宇宙空間に漂う巨大なモノリスが立ちはだかっていた。

 

…どこからともなくツァラトストラかく語りきが鳴り響く…

 

 

 完全・完結・

 

 

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*1:奄美大島では尻のことを「まり」という。

*2:「独り言ち」は独り言のこと。

*3:上海帰りのリル 歌手:津村健 作詞:東条寿三郎 作曲:渡久地政信

*4:個性豊かな登場人物を揃え過ぎて、もへじでは続きは書き切れませんから絶対に続きませんのです (´▽`;;;)