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アボカドの種を植える男 序章


アボカドの種を植える男

2020年5月11日 

 

序章

森のバターとも言われるアボカド。

 

そのアボカドが好きな男がいた。

 

フランスパンに柔らかくなったアボカドをペーストのようにして塗り、オリーブオイルをつけ、わずかばかりの岩塩を振って食べていた。

 

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細身の長身な男は感慨げもなくフランスパンにアボカドを塗ったものを口に運びながら、ときどき赤ワインを飲んでいる。

 

男が住まうのはとある都会の雑踏から一本裏道に入ったところにあるくたびれたような古いアパートであった。アパート言っても6階建ての最上階で西日が当たる角部屋だった。

 

古いアパートで六階であるのにエレベータもなく、しかも西に面した角部屋であることから家賃が安いので男はそこに長年住んでいる。

 

少しオレンジを帯びた感じがする陽が差してくる。

 

男は、窓辺に置いた小さな植木鉢にしたプラスチックの空き容器の中の丸いものへ視線をやった。その眼は感情というものが少なく、しいて言えば自分を抑え込みコントロール下に置いている眼差しであった。

 

男は口をフランスパンでもぐもぐしながら、「カタン」と椅子の音を立って窓辺に近づいた。その動きはスローモーションのように残像を残すのだが、それでいて何時動いたのかというほどの速さで窓辺に近づいいた。

 

「割れた!」

 

男は呟いた。

 

「・・・」

 

男は植木鉢とも言えないプラスチックの空き容器を手にして見ている。ブラスチック容器の中にはミズゴケと丸い4cm前後で丸く茶色い色をしたものが入っている。その茶色く丸いものが中央で割れて開いている。

 

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男は割れている部分を何かを捜し確かめるようにしげしげと見ていた。

 

「芽が出てきている…」

 

男のスマホが低い音を立てた。

 

男はスマホの相手と数言交わして目を細めた。

男の細めたその眼には虚無しか映っていない。

 

小一時間して男は目立たない服に着替え、西日の当たる部屋を後にした。

背中から見る男の右肩が、分かるか分からないか程度に上がっている。

男は左利きだった。

右の内ポケットに、何かに少し重みのあるものでも入れているのだろうか。

 

数日が経って男が戻ってきた。

男はフランスパンとワインと数個のアボカドをテーブルの上に置いた。

西の窓から長い光が入り込んで赤ワインのボトルに当たり、赤ワインをまるでロゼのような色合いに見せていた。

 

男はすぐに窓辺のプラスチックの容器のところへ動いた。

ワインを注ぐコップにわずかばかりの水を入れている。

この部屋で男にとって男が唯一気に掛けているのは、プラスチック容器の中の丸い大きなタネだった。

数日前にはそれが割れていた。

 

男はプラスチック容器を手にすると、感情表現の乏しそうな目の中で少し光が強くなったかのように見えた。

男は急いでプラスチック容器の中にワイングラスの中の水を注いだ。

水を注いだと言っても小さなプラスチックの容器である。

それもごみとして捨てるかのような、何かの食品の小さな空き容器だから、水もたくさんは入りはしない。

 

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「芽が出ている、本当だったんだ」

 

男はアボカドの種は植えておくと芽が出てくるんだってことを聞いた。

あれはベラノゴッチの家に行った時だった。

ベラノゴッチは食事中だった。

 

アボカドを食べていて

「おい、マルチェ」アボカドの種を植えておくと芽が出てアボカドの木が育つんだぞ。

お前もいつまでもこんな仕事をやっているわけにはいかんだろう。

この仕事は精神が張り詰めた若いもんがやる仕事だ。

この仕事を長く続けいつの間にか立派な中年になってしまったなあお前。

だがな、ぼつぼつ足を洗う用意をしろ。

アボカドでも食って、その種を植えて、隠居したらアボカド農園でもやったらどうだ…ふはははぁあっ」

 

ベラノゴッチはいつもの饒舌さでまくし立てた。

ベラノゴッチは浮浪者のようなおれを拾って面倒を見てくれた。

その上に仕事も斡旋してくれる。

仕事の報酬は大きな金額であったが、マルチェと呼ばれた男は特にお金に頓着していなかった。

 

「食べられたらそれでいい」

 

「寝るところがあればそれでいい」

 

マルチェはその程度の欲望しかない男だった。

仕事の報酬を受け取り行くが、当面の生活費を現金でもらって残りはサインをしてそのお金を預かって貰っていた。

ベラノゴッチの下で30年以上働いて、マルチェはいつしか大金を得ていた。

仕事の数は少ないが報酬は大きい。

これまでのその報酬の殆どをベラノゴッチに預けてある。

 

「お前が貯めたお金で、小さな農園の一つぐらいは買えるんだから、引退したらそうしろよ。歳も歳だしこれからはお前に振り分ける仕事もうんと少なくなるぞ」

 

ベラノゴッチがマルチェに向かってそう言い放ち、ナプキンで口を拭っていた。

 

マルチェは手にした鉢代わりのプラスチックの容器を手にし、ベラノゴッチの言葉を頭の中に思い描いていた。

アボカド農園で野良作業をして過ごすのも悪くはないな。

芽が伸びてきたアボカドの種を見てマルチェはそう思った。

 

ベランダの窓にはいつしか鉢代わりのプラスチック容器が幾つかならんでいた。

男には肉親というものは誰一人としていなかった。

孤児院を飛び出してからはコソ泥みたいな真似をして生きてきた。

人に言えないようなこともした。

男の子の体を買う男の大人もいるのだと知った。

そうやって生きて来た。

 

そんなときにベラノゴッチと知り合った。

この男も体をが目的だろうと思ったが、ベラノゴッチは違っていた。

死んだような眼をしたお前が気に入ったと言った。

 

ベラノゴッチは男色には全く興味がない。

うまい酒と食べ物と女と金があれば薬もやらずにハイになれる男だ。

マルチェが十二歳ぐらいの時に、ベラノゴッチは五十代ぐらいに見えた。

とってもとっても大人に見えた。

ベラノゴッチはいま見ても五十代ぐらいにしか見えない。

 

それに引き換えおれは歳をとってしまった。

食べるものはフランスパンにアボカドと、少しばかりのカマンベールチーズがあればよい。

ベラノゴッチの言う通りかもしれんなとマルチェは思った

 

それと赤ワインだ。

 

赤ワインは水代わりに飲む。

この町の水道水は消毒のカルキが臭くて飲めやしない。

アボカドの種にやる水は、汲んでおいてカルキ臭が抜けたものを与えている。

 

「アボカド農園…」

 

いつしかマルチェの頭の隅には、農園の片隅の粗末な小屋でロッキングチェアに揺られながら、フランスパンと赤ワインと自家製のアボカドを食べる自分を思い描いていた。

 

ある時、マルチェは怪我をして帰ってきた。

右腕のシャツに血が滲んでいた。

幸いというかマルチェは左利きだった。

シャツを脱ぎ右腕の傷を消毒し自分で包帯を腕に器用に巻いていた。

傷口が大きいのかそれでも血が包帯に滲んでいた。

マルチェは知り合いの医者に電話をして傷口を縫ってもらうことにして。

 

知り合いの医者というのはもぐりの医者だ。

金さえ払えば傷の手当からちょっとした手術に堕胎まで、なんでもこなす。もぐりの医者だが腕はそれなりに確かなようだ。

以前は大きな病院で副主任まで務めたらしいが、女で世間から転落して落ちた男だ。

その女にも逃げられ、いまは別の女が助手を務めていた。

 

マルチェが上着を脱ぐと、右胸には拳銃が肩から下げたホルダーに入っていた。

もぐりの医者はその拳銃を見つめた。

だからマルチェの右肩は少し上がり気味なのだと分かっていた。

体のどちらかに重いものを持つと体がバランスを取ろうとして、自然と重い方の方が上がるのだ。

そしてマルチェが左利きなのも知っている。

 

「銃創は貫通しているし筋肉や神経などにも問題がない。

一ヶ月もあれば表面上は治癒するだろう。

だが、腕の中の組織が完全回復するまでには疼くかもしれんから、痛み止めを出しておくから、痛みが我慢できない時だけ1錠のんでくれ」

 

もぐりの医者のスカッチオはそう言った。

 

痛み…

 

痛みはマルチェにとっては忘れたに近いものだ。

マルチェは痛みに鈍感である。

肉体的精神的痛みに耐えているうちに、いつしか心が痛みを殺してくれるようになった。

針で銃創痕を縫っている時も目を離さずに見つめていた。

医者に来れないときは自分で縫うつもりでやり方を見ているのだ。

 

フランスパンとワインと、いくつかのアボカドにカマンベールチーズを買って部屋に戻ってきたマルチェ。

いつものように窓辺のアボカドの苗を観察しおもむろに水を与える。

種のままのアボカド。

種が割れたアボカド。

割れた種から芽を伸ばしているアボカド。

そんなアボカドが幾つか置いてある。

 

スマホが鳴る。

スマホから男がまくしたてるこれが漏れ聞こえる。

仕事に失敗したことで男はわめき散らしているのだ。

マルチェは表情を変えることもなく「ああ」とか「はい」とか答えているだけだ。

 

「だから、早い事引退しろってんだよっ!」

 

その声でスマホの話し相手がベラノゴッチの声と知れた。

 

「次はこんなことは起こしません。

大丈夫です。

農園を買っても生活できる金がまだ足りないと思うので、もう少しやらせてください」

 

そう、マルチェは伝えると通話は切れた。

 

マルチェはワインを開けてグラスに注ぐと椅子に腰を下ろし、フランスパンを切ってアボカドの実をバター代わりにフランスパンに塗っていた。

カマンベールチーズも数切れ置いてある。

 

窓から差し込む光が長くなって、窓辺の鉢代わりのプラスチック容器と丸いアボガドの頭とアボカドから出た細い芽が壁に影の模様を描いている。

 

マルチェの頭に差し込む低い光が当たって顔は陰って見えない。

 

ワインを飲もうと持ち上げたグラスにも長い光が当たり、壁にアボカドの苗と共にワイングラスの中のワインが揺れ動いている画を描いていた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

ほおずきれいこさんに五月十日以降はブログを書くのですよね。と、念を押された書いてみました。

ストリーもまだ出来ていないのでイントロだけです。

映画レオンを意識しながら書いています。

今後は雑記を書きながらときどき続きを書いていきたいと思います。

輻輳して別の物語なども書いていきたいと思います。

ただし毎日更新は今のところ考えていません。

書けるときに書いていきたいと思います。

もへじ 拝

 

 

 

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