↑音読で楽しんでね 2025年6月15日 日曜日
2025年度 静吉チャンネル プレゼンツだよ😍
ワンドリンク制レストラン・前編
かつて、私は小さなフレンチビストロを開きました。
「日本でも、もっと気軽に本格的なフレンチを楽しんでほしい」
そんな思いで、リーズナブルな価格で料理のコースを提供し、ワインも手頃な価格で揃えました。
料理には自信がありました。実際にお客様からも「とても美味しい」とお褒めいただくことが多かった。
けれど、店は1年半で閉じました。
理由はシンプルです。
多くのお客様が、ドリンクを一切頼まなかったのです。
水だけ。ワインどころか、ソフトドリンクすら頼まない。
それでは、どうやって店を回していけるでしょうか?
レストランは「食堂」ではありません
日本ではまだ、レストランに対する意識が「デパートの上の食堂」的な感覚にとどまっているように感じます。
料理だけを食べて、さっと帰る。ドリンクは注文しない。
コース料金を払っているのだから、それで十分だという考え方。
気持ちは分かります。でも、レストランというのは料理だけで利益が出る仕組みではないのです。
食材の原価率は高く、仕込みやサービスにかかる手間も膨大。
特に日本のレストランは、海外に比べて価格が驚くほど安い。円安の影響を差し引いても、海外からの観光客が「信じられない」と言うほどです。
ワンドリンク制が「乞食」なのか?
先日SNS(Threads)で、ある人が「予約したフレンチでワンドリンクオーダーを求められ、それは聞いてないと断ったら追い出された」という投稿をしていました。
コメント欄では賛否両論。
「ワンドリンク制なんて聞いてない」
「押し売りだ」
中には「チップくれチップくれと騒ぐ乞食と同じ」とまで書かれていました。
本当にそうでしょうか?
昼間に酒は飲めない?じゃあソフトドリンクでも
もちろん、「昼間から酒を飲め」と言っているのではありません。
アルコールに耐性がない方、車を運転される方、健康上の理由――いろいろ事情はあるでしょう。
それならば、ソフトドリンクでも構わないのです。
炭酸水でも、ジュースでも、紅茶でもいい。一杯だけでいい。
それが、レストランにとっては大きな支えになるんです。
「料理だけでペイすればいい」という考えでスタートしましたが、現実は甘くありませんでした。
最終的に耐えきれず、閉店を決断しました。
食材の質を落としたくない。サービスのクオリティも維持したい。
でも、それには最低限の協力が必要だったのです。
ほんの少しの気遣いが、街のレストランを守る
「フレンチって高いんでしょ?」「ワイン頼まないといけないんでしょ?」
そう思われがちですが、現実は逆です。
ものすごく頑張って、価格を抑えて提供しているのが日本のレストラン事情。
ワンドリンク制を告げるのも、店側としては本当に苦渋の選択なのです。
「たった一杯でも飲んでくれたら、持ちこたえられた」
そんな声を、もっと多くの方に届けたい。
「気持ちよく食事をしてほしい。でも、気持ちよく店も営業させてほしい」
それが、私の正直な気持ちです。
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