2025年度 静吉チャンネル プレゼンツだよ😍
菖蒲・花菖蒲・杜若・アヤメ
― 似て非なる花と名前の迷宮をひもとく
【はじめに】
「菖蒲(しょうぶ)」「花菖蒲(はなしょうぶ)」「杜若(かきつばた)」「アヤメ」。
この4つの花の名前は、日本人なら誰もが耳にするけれど、いざ説明しようとすると混乱する。
園芸ファンでなくとも、端午の節句、季節の俳句、庭園の池や菖蒲園で、きっと一度は出会っている花たちだ。
それぞれの違いを整理しながら、有名な俳句も添えつつ、日本文化に息づく言葉の深みを探ってみたい。
【1. 菖蒲(しょうぶ)】
✅ 植物分類
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サトイモ科ショウブ属
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水辺や湿地に生える
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細長い葉
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花は地味な棒状(肉穂花序)
✅ 用途・文化
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端午の節句の「菖蒲湯」に使う
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強い香りが厄除け
✅ 俳句の季語
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夏の季語
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主に端午の節句(五月五日)の象徴
✅ 有名俳句
✅ ポイント
本来「菖蒲」とは、この香りを持つ薬草を指す。アヤメ科の花とは別物。
【2. 花菖蒲(はなしょうぶ)】
✅ 植物分類
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アヤメ科アヤメ属
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学名:Iris ensata var. ensata
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湿地や水辺に植えられる
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大型で華麗な花
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園芸品種が数千種とも
✅ 用途・文化
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江戸時代からの園芸ブーム
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観賞用に改良
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菖蒲園の名所多数
✅ 俳句の季語
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夏の季語
✅ 有名俳句
※花菖蒲の名所を詠んだ句として知られる(花菖蒲が咲く季節の梅雨=さみだれ)
✅ ポイント
「菖蒲」という字を使うが、サトイモ科のショウブとは無関係。アヤメの仲間。
【3. 杜若(かきつばた)】
✅ 植物分類
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アヤメ科アヤメ属
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学名:Iris laevigata
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池や湿地で育つ
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花弁中央に白い筋模様が特徴
✅ 用途・文化
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古来、歌枕として有名
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伊勢物語の「かきつばた」の歌が有名
✅ 俳句の季語
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夏の季語
✅ 有名俳句
杜若 語るも旅の ひとつかな
― 芭蕉
✅ ポイント
水辺に植えられるが、花菖蒲より野趣がある。伊勢物語の在原業平「唐衣 きつつなれにし…」の名所も有名。
カキツバタとロボ君
【4. アヤメ(文目・綾目)】
✅ 植物分類
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アヤメ科アヤメ属
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学名:Iris sanguinea
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乾いた草地にも咲く
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花弁に網目状の模様
✅ 用途・文化
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端正で素朴な野の花
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「文目模様」が名前の由来
✅ 俳句の季語
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夏の季語
✅ 有名俳句
あやめ草 足に結ばん 草鞋の緒
― 松尾芭蕉
✅ ポイント
湿地を好むカキツバタや花菖蒲と異なり、比較的乾いた場所でも咲く。模様(あやめ=文目・綾目)が特徴。
【5. まとめ】
✅ 菖蒲(ショウブ):サトイモ科、香りを楽しむ薬草
✅ 花菖蒲(ハナショウブ):アヤメ科、観賞園芸用に改良
✅ 杜若(カキツバタ):アヤメ科、水辺に野趣のある花
✅ アヤメ:アヤメ科、網目模様の野の花
【6. 言葉の混乱と文化】
本来まったく別の植物でありながら、「菖蒲」という漢字に全てを包み込んでしまった日本語。
日本語の美点でもあり、誤解を生む曖昧さでもある。
俳句という短詩の世界では、この曖昧さを逆に豊かさとして詠み込んできた。
私たちが「アヤメ」「菖蒲」と打ち込むIME変換の挙動も、この文化的な歴史の上にある。
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