外郎売
2019年11月13日
外郎売(ういろう)ってご存知でしょうか。
外郎(がいろう)は中国の官職の一つだったもので、元の礼部省外郎の職を指す単語でとかです。外郎は定員外の職員とのことですから補助要員みたいなものでしょうか。
外郎「がいろう」がなぜ外郎「ういろう」となるのかは、「外=うい」は唐音だからとのことでういろうとなるそうです。
今回のういろうは、食べる和菓子の方の「ういろう」ではありません。
※ちなみに本日は、茨城県に袋田の滝などの見学日帰り観光旅行中です。この記事は予約投稿です。
外郎売についての詳細は Wikipedia にありますので、そちらを参照してください。
外郎売(ういろううり)は、享保3年(1718年)正月、江戸森田座の『若緑勢曾我』(わかみどり いきおい そが)で二代目市川團十郎によって初演された歌舞伎十八番の一つである。 現在は十二代目團十郎が復活させたもの(野口達二脚本)が上演されている。
九代目市川團十郎の虎屋東吉
(鳥居忠清画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
この外郎売は喋るプロの方が口慣らしの練習にも使うもので、アナウンサーの練習にも取り入れらています。
もっともアナウンサーになろうなんて思っている方は、大学時代すでに外郎売なども勉強しているので、ほぼ空で*1すらすらと口上が言えると思います。
とまあそれだけ外郎売は古今から喋るプロの方向けの訓練にも良いし、喋るときに活舌が悪いと自覚している方がいらしたら、外郎売で繰り返し繰り返し活舌が良くなるように練習してみられては如何でしょうか。
外郎売はアナウンサーはもとより、俳優、声優、教師(個人スキルとして)、話すことが職業の人が勉強しているものです。
拙者親方と申すは、御立会の内に御存知の御方も御座りましょうが、御江戸を発って二十里上方、相州小田原一色町を御過ぎなされて、青物町を上りへ御出でなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、只今では剃髪致して圓斎と名乗りまする。
元朝より大晦日まで御手に入れまする此の薬は、昔、珍の国の唐人外郎と云う人、我が朝へ来たり。帝へ参内の折から此の薬を深く込め置き、用うる時は一粒ずつ冠の隙間より取り出だす。
依ってその名を帝より「透頂香」と賜る。即ち文字には・頂き・透く・香・と書いて透頂香と申す。
只今では此の薬、殊の外、世上に広まり、方々に偽看板を出だし、イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと色々に申せども、平仮名を以って「ういろう」と記せしは親方圓斎ばかり。
もしや御立会の内に、熱海か塔ノ沢へ湯治に御出でなさるるか、又は伊勢御参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
御上りなれば右の方、御下りなれば左側、八方が八つ棟、面が三つ棟、玉堂造、破風には菊に桐の薹の御紋を御赦免あって、系図正しき薬で御座る。
イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、御存知無い方には正真の胡椒の丸呑み白河夜船、されば一粒食べ掛けてその気味合いを御目に掛けましょう。
先ず此の薬を斯様に一粒舌の上に乗せまして、腹内へ納めますると、イヤどうも言えぬわ、胃・心・肺・肝が健やかに成りて、薫風喉より来たり、口中微涼を生ずるが如し。魚・鳥・茸・麺類の食い合わせ、その他万病即効在る事神の如し。
さて此の薬、第一の奇妙には舌の廻る事が銭ごまが裸足で逃げる。ヒョッと舌が廻り出すと矢も盾も堪らぬじゃ。
そりゃそりゃそらそりゃ廻って来たわ廻って来るわ、アワヤ喉サタラナ舌にカ牙サ歯音、ハマの二つは唇の軽重。開合爽やかに、アカサタナハマヤラワ、オコソトノホモヨロヲ。
一つへぎへぎに、へぎ干し・はじかみ、盆豆・盆米・盆牛蒡、摘蓼・摘豆・摘山椒、書写山の社僧正。
小米の生噛み、小米の生噛み、こん小米のこ生噛み。繻子・緋繻子、繻子・繻珍。
親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親嘉兵衛・子嘉兵衛、子嘉兵衛・親嘉兵衛。古栗の木の古切り口。雨合羽か番合羽か。
貴様の脚絆も革脚絆、我等が脚絆も革脚絆。尻革袴のしっ綻びを、三針針長にちょと縫うて、縫うてちょとぶん出せ。
河原撫子・野石竹、野良如来、野良如来、三野良如来に六野良如来。
一寸先の御小仏に御蹴躓きゃるな、細溝にどじょにょろり。京の生鱈、奈良生真名鰹、ちょと四五貫目。
御茶立ちょ、茶立ちょ、ちゃっと立ちょ。茶立ちょ、青竹茶筅で御茶ちゃっと立ちゃ。
来るわ来るわ何が来る、高野の山の御?小僧、狸百匹、箸百膳、天目百杯、棒八百本。武具、馬具、武具馬具、三武具馬具、合わせて武具馬具、六武具馬具。
菊、栗、菊栗、三菊栗、合わせて菊栗、六菊栗。麦、塵、麦塵、三麦塵、合わせて麦塵、六麦塵。
あの長押の長薙刀は誰が長薙刀ぞ。向こうの胡麻殻は荏の胡麻殻か真胡麻殻か、あれこそ本の真胡麻殻。
がらぴぃがらぴぃ風車。起きゃがれ小法師、起きゃがれ小法師、昨夜も溢してまた溢した。
たぁぷぽぽ、たぁぷぽぽ、ちりからちりから、つったっぽ、たっぽたっぽ一干蛸。落ちたら煮て食お。
煮ても焼いても食われぬ物は、五徳・鉄灸、金熊童子に、石熊・石持・虎熊・虎鱚。
中でも東寺の羅生門には、茨木童子が腕栗五合掴んでおむしゃる、彼の頼光の膝元去らず。
鮒・金柑・椎茸・定めて後段な、蕎麦切り・素麺、饂飩か愚鈍な小新発知。
小棚の小下の小桶に小味噌が小有るぞ、小杓子小持って小掬って小寄こせ。
おっと合点だ、心得田圃の川崎・神奈川・程ヶ谷・戸塚は走って行けば、灸を擦り剥く三里ばかりか、藤沢・平塚・大磯がしや、小磯の宿を七つ起きして、早天早々、相州小田原、透頂香。
隠れ御座らぬ貴賎群衆の、花の御江戸の花ういろう。
アレあの花を見て、御心を御和らぎやと言う、産子・這子に至るまで、此の外郎の御評判、御存じ無いとは申されまいまいつぶり。
角出せ棒出せぼうぼう眉に、臼杵擂鉢ばちばち桑原桑原桑原と、羽目を外して今日御出での何茂様に、上げねばならぬ、売らねばならぬと、息せい引っ張り、東方世界の薬の元締、薬師如来も照覧あれと、ホホ敬って外郎はいらっしゃりませぬか。
外郎売には早口言葉も入っていますので、活舌練習にも最適です。
自分はちゃんと喋れているって思っている方は、仲間以外と喋ってみて聞き返されるってことがないかどうかの確認もしてみてください。
仲間だと多少発音がいい加減だったり語尾が弱かったりしても、何のことを言っているかを脳の習い性で勝手に補正判断してくれるので、問題なく聞こえているだけだなんてこともあります。
話し方で大事なことはもう一つあり、ゆっくり喋ることです。
早口な方がゆっくり喋る努力をするのって、これは常に意識していないと出来ないのでかなりの矯正が必要です。
でもゆっくり喋るのは、持って回った言い方で意味不明な内容になることじゃないので、要点をゆっくりときれいにな発音になるようにしましょう。
外郎売を早口で喋る必要は全くありません。
一語一語丁寧な発音を心掛け、可能なら丸暗記して、空で呪文のごとく言えるようにしておくと、時々空で唱えて気晴らしになります。
自分は低山ハイキングで誰もいないときには、外郎売や歌謡曲を唄いながら歩いています(笑)
読めない漢字もあるかもしれませんが、それも脳活だと思ってご自分で読み方を調べてください。
ネットで探せば外郎売にフリガナも振ってあるバージョンもありますので、そちらを探して印刷するのも良いかと思います。
また、外郎売は最近は Wikipedia 収録バージョンに収斂してきていますが、言葉教室などにより多少読み方が違っていたりすることもありますが、基本は同じなのでどれで勉強しても良いと思います。
ブログ主は外郎売をプリントアウトしてトイレに置いておき、用を足すたびに少しずつ覚えながら、そうだなあ三年ほどかかって丸暗記しました。
若い人なら数日もあれば暗記しちゃう程度の文字数ですけど、なんたって歩けば耳から記憶がぽたぽたと漏れ零れる有様なので、覚えても覚えても覚えてないなんてことになるので本当に時間がかかりました。
まあ、トイレにそんなに長くいるわけじゃないですしね。
時間がかかっても別段構わないので、活舌とボケ防止の一環として、外郎売の口上やってみてはいかがでしょうかね。
自分ですが、せっかく暗記した外郎売も、最近たまに空でやってみるとかなりおぼつかなくなってきていますので、再度練習し直そうかなと思っています。
米津玄師さんのLOSERを早口言葉の練習として唄うのもありです。ハレ晴レユカイなども早口で唄う入門用として良いかと思います。
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CM
*1:なにも見ないで暗記した文章を口に出して言うこと。