へのへのもへじ

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創作物語・ミニマリストM子の憂鬱「メルちゃん」


物を捨てることにより幸せを感じるという概念に凝り固まってしまったミニマリストM子。

 

世の中にはどんなことでも執着することにより、執着することによる充足感で幸福感をじてしまう感覚が生ずることがある。

 

例えば「行動する」→「結果を得る」→「脳からドーパミン放出」→「快感・多幸感」から中毒性を帯びてしまうことになる。

 

この場合の「行動する」はなんでも可能なのだ。例えば収集癖もその一つ。さらに人間としての五大欲全てにおいて「行動する」から得られる「快感・多幸感」がある。

 

ミニマリストM子が得た「快感・多幸感」の最初は、なにげに好きだった男の子からプレゼントされた缶バッジを捨てたことがきっかけだった。

 

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それは忘れもしない年長組の時だった。

 

嫌いじゃないと思っていた男の子が「お前にやる」ってくれたのが缶バッジだった。 ミニマリストM子もその時はまだミニマリストではなかったけどM子にしてみれば初めての異性からのプレゼントだった。

 

嬉しかった。

 

それから小学一年生になった時にも、ランドセルのカバンに缶バッチをつけて学校に通っていた。

 

そんなある日の放課後の事。

 

M子は校庭の鉄棒で遊んでいた。

 

校庭でM子は片足かけで鉄棒上がりをしていた。鉄棒に片足かけてくるっと鉄棒の上に跨り上がるがるのだ。

 

その時ふっと校門の方を見たときに、缶バッチをくれた男の子がれいこちゃんと手を繋いで歩いていた。

 

校門を抜けて行く、赤い色と黒い色の並んだランドセル二つを見たときに、M子の中で何かが切れた。

 

M子は鉄棒の横に置いたリュックから、雑に缶バッチを取り外すと学校のフェンスの外に投げ捨てた。

 

M子はなんだかむしゃくしゃした衝動で片足かけ鉄棒を思いきりやってしまい、鉄棒に上がった時に足がズレて鉄棒が股の間にずんと入り込んでしまった。

 

鉄棒に跨ったようになった時に鉄棒が股の間に入った痛みと共に、何とも言えない刺激が伝わってちょっとした幸せな気分を味わった。それはおしっこをした時や、うんちをした時に得るような快感でもあったけど、それ以上に強い快感でもあった。

 

そんなM子が中学生に入ったころには、自分の大事なものを自分から捨てる時に、捨てた後悔と共に後からやってくる快感を楽しめるようになってきた。もはやミニマリストとしてのM子たる所以の芽生えでもあった。

 

中学三年の時にヤンキー気のある友達がそれを捨てたことを話してくれた。気持ちよくもなんともなくて痛かっただけだったと言っていた。でも抱き合っていたのは温かくて嬉しかったそうだ。

 

相手はというと、幼稚園の時にあたしに缶バッチをくれた男だった。

 

それを聞いてM子は自分の中がきゅんとした感覚が生まれた。

 

別段缶バッチをくれた男のことを思ってではなくて、女の子の大事なものを捨てたってことを聞いてきゅんとしたのだ。

 

缶バッチをくれたあんな安い男になんかさせるもんか。私はもっときゅんきゅんするような相手に捨てたいと思った。

 

そんなことを思いつつ、いつしか40にもなっていた。

 

短いスカートに見せパンティを履いてあられもないショットをわざと繰り出しながらのテニスもクラブに入ってやったし、男の多い登山クラブにも入った。

 

30も半ば過ぎたころにはスナックにも行ってお酒も飲みカラオケも唄って遊んできた。

 

それなのに、いまだ加藤はいねのごとく清い体そのままだ。

 

既に親、兄弟、友達を捨てて、大きな多幸感を味わい何物にも代えがたいほどのエクスタシーを味わってきた。もはやちまちましたのもを捨てても、なにも幸福感を得ることは出来ない。

 

その上に女の大事なものを捨て、さらにその相手を捨てるという多幸感を味わいたい思いは、未だに叶えられていない。

 

叶えられない多幸感への欲求不満から妄想が始まり、結婚して子供を産むまで待ってから亭主を捨て、最後に愛する我が子を捨てることで得るであろうの多幸感に憑りつかれてしまっていたM子であった。

 

まだ40だ。

 

そうだ、婚活アプリに登録しよう。

 

婚活アプリなら誰か男が捕まえられるだろう。

 

男の稼ぎが低くてもミニマリストたるM子はミニマリストたる所以で既に十分な金は蓄えてあるから男の稼ぎに頼る必要はないのだ。

 

このさいデブでハゲじゃなきゃ容姿も妥協するつもりだ。妊娠さえすれば捨てる男なんだから。そう思って婚活アプリを始めた。

 

メルちゃん、ぼくのタイプです。

あら、嬉しいわ、じゃあ結婚しましょう

いや、ちょっとまってください。まずはお互いを少し知り合いましょうよ。

あら、何が知りたいの?

趣味とか、好きな食べ物とか、いろいろあるでしょう?

そうねえ、プロフに書いてあることだけじゃダメなの?

メルちゃんさん、プロフの項目少ないですよね。

わたしはこだわりが少ないのよ、だから、最初にいいねくれたあなたと結婚したいわ。

そ、そんなことでいいんですか?

あなた、かわいい顔しているし、私の好みだわ。

メルちゃんこそ美人なのに、どうしてこれまでにご結婚なさらなかったのですか?

さあ、分からないわ

そうですよね、自分じゃわからないですよね。あっ、完璧過ぎて男が寄ってこないタイプってこともありますから、それほどメルちゃんはきれいです。

あら、確かに美人過ぎるって言われたことは何度もあるわ。あれって男の人のお世辞じゃないんですか?

お世辞じゃないと思います。メルちゃんさんは本当に美人です。40歳だというのになんでこんなきれいな人が婚活なんてって思ったんです。こんなにきれいならモテモテなはずじゃないですか。

あら、わたしって男の人からそう見えているの?

男にも人によって好みがあると思いますけど、10人いたら9人はメルちゃんを選ぶと思いますけど、今まで男の人は寄ってこなかったんですか。

変ねえ、誰も寄ってこないわ。だからこの歳まで一人なのよ。

失礼ですが、ご経験もないのですか。

あら、本当に失礼な質問ですわねえ。わたしだってもう40の女ですもの経験の一つや二つ…本当は、しょ、処女です、恥ずかしい!

そうなんですか、じゃあ決めましたメルちゃんさんとお付き合いして、そしてメルちゃんさんとできれば結婚したいです、ぼく。

あなた、私赤ちゃんが出来たみたいなの。

メルちゃんやったなあ、ぼくたちに赤ちゃんが出来るんだ。

妊娠16週目でもう安定期に入ったってお医者様から言われたわ。

そうか、ぼくたちに家族が殖えるんだ。嬉しいなあお祝いをしようよ。

いや、家族は殖えないわよ!

なにを言っているんだい、ぼくたち二人と子供で家族が三人になるじゃないか。

あなたとは別れるから、だから家族は殖えないのよ。

メルちゃんなにをおかしなことを言っているんだい。

だってもう離婚届を出して受理されていますから、あなたはさっさとこの家を出て行ってちょうだい。

な、何を言っているのか分からないよ、ぼく。メルちゃんどうしたんだい。

結婚するときに婚姻届けと共に離婚届も書いてくれたら結婚してあげるって言ったでしょう。その離婚届を出して来たって言っているのよ。

あれは、ぼくが浮気をしたりしたときのためのものかと思って、ぼくは浮気もせずメルちゃんひと筋で頑張ってきたのに、幸せの絶頂期のぼくにこんな仕打ちをするなんて。信じられないよ。

約束は約束よ。
(この一言で、メルちゃんことM子はから体の髄から疼くような多幸感に覆われていた)

そんなこと急に、いや、ぼくは別れないよ。

そう言ううだろうと思って、あなたは遠洋漁業の下働きに申し込んでおいたから、もうすぐその手の人たちが迎えに来てあなたを強制的にさらっていくと思うわ。そのお金であたしは引っ越しします。
(そういうM子の顔は桃色に色づき、呼吸も早まっていて悩ましい色香にさえ漂わせていた)

お前はオニかっ!

この一言でM子は初めてオルガスムスに達した。言いようのない多幸感に包まれた至福の時が訪うたのだ。この時の為に、この時の為にM子は生きて来たとも言える。

おお、よしよし、泣かないのよ。ママの夢がやっと叶うのよ。

 

とある養護施設の前に、きれいで上質なおくるみに包まれた赤ちゃんがベビーバスケットに入れられて置かれた。

 

ベビーバスケットもおくるみも総てがとても上質で高級なものだと一目で分かる。愛される喜びにゆだねられ幸せそうにすやすや眠る赤ちゃん。

  

ベビーバスケット置いた女は興奮しきって弛緩したようにふらふらとその場を立ち去り、朦朧とした多幸感と恍惚感を浮かべた顔のままふらつきながら車道にまで飛び出してしまった。

我が身さえ断捨離することになってしまったミニマリストM子の死の真相は、いまだ不明なままである。

 

養護施設の前に置かれたベビーバスケットの子が、後のHB 銀河鉄道の夜「桔梗」であるとは、この時はまだ誰も知る由はなかった。

 

◇◇◇◇◇

この物語をほおずきれいこさんに捧ぐ

 

 

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